「ワイワイ騒ぐ五輪」からの転換
医療、観光、スポーツを生かした新しい産業

小林 いろいろ改革を進めてオリンピックの肥大化を止めると、協賛企業や協賛金が減って運営に困るという状況にはなりませんか。

橋本聖子氏はしもと・せいこ/1964年北海道生まれ。駒澤大学付属苫小牧高校卒業。92年の冬季オリンピックアルベールビル大会のスピードスケートで日本人女子初の冬季五輪銅メダル獲得。95年に自民党公認で参議院議員に初当選。外務副大臣、五輪担当大臣などを経て2月から現職。 Photo by Masato Kato

橋本 「オリンピック商戦」と言われるだけあって、4年に1度の特別なものだからこそ、多くの人が一緒の場所で喜びを共有することで生まれる感動。その感動でモノが売れるという現実はありますよね。ワイワイ騒ぐ、飲む、いままではそれが狙いでした。

 スポンサーやステークホルダーはそういったオリンピックの感動をいかに経済効果に変えていくか、その効果があるからオリンピックに出る選手たちにもスポンサードしてくれたわけです。コロナ禍で今回はそれができなくなった。そうなると、新たな可能性を考えなければいけない。私は、いままだ眠っている産業があると思っているのです。教育産業であったり、芸術や文化、観光はすぐに戻らないと思いますけど、いちばんオリンピックと密接に関係するのは健康医療産業ですね。

小林 スポーツと食と医療と。

橋本 観光とも結び付くんです。これまでとは違う、もっと本質的な魅力でつながる新しい健康医療産業。実際にオリンピック・パラリンピックの本質をじっくりと見せて、どう放送するかも大きな要素です。いままでは通り過ぎてしまったかもしれないけれど、アスリートが作り上げる肉体は、365日をかけた芸術のようなものなんです。

 私は、体脂肪率7パーセントだったんですね。減らしすぎはダメだと言われて無理やり体脂肪率を10パーセントに上げたりとか。食べるモノ、吸う空気さえも考えて生活していました。それはもう、すごくストイックで、そうやって初めて他人に見てもらえるだけの体になるわけですね。

小林 単にスポーツだけじゃない、医療だけでもない、グルメでもない。

橋本 医療とスポーツと観光や食まで結び付けた文化を提供する。いろいろなやり方ができるでしょう。これが、これからの「眠っている産業」だと思うんです。

小林 橋本会長がそのようなビジョンを描いておられるとは、正直存じ上げませんでした。