マスコミの電話世論調査は「誘導」されやすい

 このようにマスコミが触れまわる「世論の多数派はすでに選択的夫婦別姓に賛成」という世論調査が一面的に過ぎないということを示す材料が、次々と出てくることに戸惑う方も多いだろうが、実はそれは極めてシンプルな理由で説明できる。

 かつてマスコミの世論誘導をテーマにした「スピンドクター」という著書の中で詳しく述べたが、マスコミの電話世論調査というのは、調査員の「聞き方」によって、いかようにも誘導ができる。

 例えば、わかりやすい例で言えば、何か不祥事やスキャンダルが発覚した政治家の進退だ。政治家の名前を告げて、「辞任すべきだと思いますか?」という質問をするのと、「現在、国会で××疑惑が追及されている××議員は辞任すべきだと思いますか?」と質問をするのでは、後者の方が「イエス」が圧倒的に多くなるのは言うまでもない。

 ネガティブな問題を説明されたにもかかわらず、「辞任しなくていい」と回答するような人はよほどその政治家や政党の支持者か、モラルが壊れている人のどちらかだ。

 このような「聞き方」で賛成へ誘導できるということでは、実は「選択的夫婦別姓」はまさしくうってつけだ。

 電話で世論調査をする際には、電話に出た人の知識に応じて説明をしなくてはいけない。「選択的夫婦別姓についてお伺いします」と言っても、「それなんだっけ?」では調査にならないからだ。そのため、例えば、あるマスコミはこんな風に質問をしていた。

「法律を改正して、夫婦が同じ名字でも、別々の名字でも、自由に選べるようにすることに賛成ですか」

 日本人の常識的な感覚として「自由」はポジティブなイメージであることは言うまでもない。「自由に選べる」はそれだけで「賛成」につながる要素なのだ。また、マスコミの世論調査は一度にいくつも質問をして、ポンポンと次の質問に行くので、先程の内閣府の調査のように深掘りをしない。

 そのため、どうしても政権の支持率と同じように、「選択的夫婦別姓に国民の大多数が賛成」みたいなザックリとした結果になりやすく、100%賛成なのか、「うちは夫婦別姓なんてしないけど、ま、いいんじゃないの」というレベルの賛成なのかなどの「意志」が見えにくいのだ。