【追悼】日立再建の立役者・中西前会長が「心残り」だったこと日立再建の立役者である中西氏は、デジタル化による「社会イノベーション事業」を柱にすることを決め、事業ポートフォリオを見直した  Photo:JIJI

日本経済団体連合会(経団連)の前会長で、日立製作所の社長、会長を歴任した中西宏明氏が死去した。2019年にリンパ腫を患っていると公表し、闘病中だった。日立の経営再建の立役者だった中西氏は、同社社長退任後も強い影響力を持ち、現役幹部に檄を飛ばしていた。日立も経団連も、中西氏の改革マインドを受け継げるかどうかが問われることになる。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

国内外の首相と「筋論」で渡り合い
日立のデジタル化・グローバル化を推進

 中西宏明氏はリーマンショック後、7873億円の最終赤字に転落した日立製作所の経営を再建しただけではなく、デジタル化を軸にした事業の取捨選択により、成長軌道に乗せる役割を果たした。

「こう改革すべき」というロジックを一度固めたら、簡単には曲げない性格であったため、敵も少なくなかった。それでも、日立の事業構造改革が一貫性を持って進められ、収益が大幅に改善したのは、中西氏の胆力があってこそだった。

 中西氏といえば、日立の成長エンジンになっているデジタル化によるソリューション事業の提唱者として知られる。その一方で、日立のグローバル化を推進した功績も大きい。

 鉄道車両事業は、ドメスティックだった日立社内でグローバル化の先頭を走る存在だが、当初、海外ではほとんど知名度がなかった。中西氏は同事業の海外展開を進めるため、英国やイタリアの閣僚と直接会って関係を構築。現地メーカーのM&A(企業の合併・買収)や欧州での工場建設などにより事業を現地化するための地盤を固めた。

 トップ外交での交渉力は、日立が抱える最大のリスクだった英国への原発輸出プロジェクトでも発揮された。

 エネルギー安全保障や雇用拡大のため原発を推進したい英国のメイ首相や、成長戦略として原発を輸出したい安倍晋三首相(いずれも当時)と直接渡り合い、「ビジネスとして成り立たないプロジェクトには投資できない」という筋論を貫いた。

 日立は英原発輸出プロジェクトからの撤退により3000億円の減損損失を計上したが、政府の言いなりになることなく、それ以上の損失拡大を未然に防いだことは資本市場から評価された。

 他方、日立関係者が「中西会長は無念だったと思う」と振り返るのが、日本経済団体連合会(経団連)の「民僚」との戦いである。