日立新社長に就任する小島啓二氏(左)と東原敏昭会長。小島氏はデジタル化のソリューション事業「ルマーダ」の生みの親だ日立新社長に就任する小島啓二氏(左)と東原敏昭会長。小島氏はデジタル化のソリューション事業「ルマーダ」の生みの親だ 写真提供:日立製作所

日立製作所の社長が7年ぶりに交代する。小島啓二新社長はM&A(企業の合併・買収)による成長のタネの獲得は終わったという認識を示し、今後は「自分の力でスピーディーに成長する」ことに力を注ぐ考えを示した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

グローバル展開を加速するために
小島氏は安定感で抜てきされた

 日立製作所の社長交代は急遽、前倒しで行われた。当初は中西宏明・日立会長の経団連会長としての任期が満了となる22年6月をめどに行われるとみられたが、中西氏がリンパ腫の治療に専念するため日立と経団連の会長を辞することになったためだ。

「突然の指名で大変驚いている」。小島啓二氏は自らの社長就任を発表した12日の会見でそう語った。それでも、次期後継の本命だったこともあって落ち着いた様子であり、過度な気負いは見られなかった。

 日立の社長レースでは、小島氏の対抗馬として2人の副社長の名前が挙がっていた。アリステア・ドーマー氏と徳永俊昭氏である。両者とも50代であり、64歳の小島氏より若いことがウリの一つだったが、日立の指名委員会はトップの若返りより小島氏の安定感を優先した。

 研究所出身の小島氏は、ビジネスシーンで舌鋒鋭い指摘をする局面もあれば、ソフトな語り口で議論する局面もある。「頭脳明晰なのに偉ぶらない」(日立関係者)との社内評があるくらい、敵が少ないことで知られる。

 実は、小島新社長の誕生は日立にとって2つの意味を持つ。それは、「集団指導体制」と「オーガニック成長路線」への移行である。