脱炭素#8
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脱炭素への急激なシフトによる「グリーンバブル」は、日立製作所や東芝の命運を左右する転換点となる。特集『脱炭素 3000兆円の衝撃』(全12回)の#8では、両社の電力部門が「名門」復活に向けて描くシナリオに実現の可能性があるのかに迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

凋落した名門が復権狙う
グリーンバブル100兆円市場

「国内の再生可能エネルギー関連投資は今後10年で累計100兆円近くになると独自に試算している」。畠澤守・東芝専務は、脱炭素にシフトするための再エネバブルへの期待をそう語る。

 実際に、東芝や日立製作所で、発電機などを製造する電力部門は、再エネバブルで起死回生を期している。同部門は、東芝や日立の社内において「名門中の名門」だった。東京電力ホールディングスをはじめとした電力会社による設備投資額は大きく、かつ長期のメンテナンスが必要なため、電機メーカーにとって“おいしい事業”だったのだ。

 とりわけ日立では電力部門出身であることが「社長の必要条件」とまで言われたものだった。

 だが近年は、かつての名門は見る影もなく凋落の一途をたどっていた。

 日立の場合、2020年3月期の連結売上高に占める電力部門の構成比は4%、連結営業利益に占める同構成比は2%と、存在感はほぼゼロに等しい。

 東芝に至っては、海外原子力発電事業に失敗した電力部門は16年3月期に3463億円もの損失を計上するなど経営危機の引き金となった。その後も、3期連続で赤字が続くなど、“問題事業”の筆頭となっていた(20年3月期は営業黒字に転換)。

 お荷物扱いされた、かつての社内エリートたちが失意の底にあったことは想像に難くない。だがここにきて、電力部門に復活のチャンスが巡ってきた。再エネバブルという追い風が吹き始めたのだ。

 両社が20年に発表した電力部門「復権」のシナリオが実現する可能性を検証していこう。