先月、親会社の住友商事とKDDIがそれぞれの出資比率を50%まで上げることを表明し、両社の共同経営となるジュピターテレコム(JCOM)。今後の事業戦略を、渦中の森修一社長に聞いた。
──住友商事とKDDIの折半出資、共同経営体制で、何が変わるのか。
両社の発言力が高まるのは明らかだ。KDDIはNTTへの対抗軸としてケーブルテレビ(CATV)を取り込む考えで、もちろんその戦略には全面的に協力する。だが、われわれはあくまでも、JCOMの顧客層へ最適なサービスを提供していくことが最優先。KDDIと今後、win-winの関係を構築することができるかがポイントとなる。
例えば、CATVの次世代端末(次世代ケーブルSTB)の規格は、KDDIはインターネット利用が前提の仕様で若者向け。一方、われわれが採用する規格はCATV業界が策定を主導したもので、基本的にテレビユーザー向けだ。
KDDIの規格を採用すれば、若い世代を中心としたネット利用者を開拓できるという魅力はあるが、どちらが現在の顧客層に最適か、様子を見ながら考えたい。つまり、今回KDDIの出資比率が上がったからといって、KDDIの子会社になるわけではなく、すぐにすべての規格を変更するわけでもない。
住友商事も株式を50%持ち、50:50の経営は難しいが、意見が合致しない場合でも両社で、コンセンサスを取るよう努めていく。
──CATV業界の反応はどうか。
CATVは他の放送事業と違って、全国に連盟加盟社だけでも300社以上あり、地域ごとに独自の放送事業を展開している。だから、KDDIの発言力が業界内で一気に高まることに戦々恐々としている会社が多いのは事実。確かにJCOMは、来秋には業界2位のJCNとの統合を経て、市場シェアの半分を握る一大メディアとなる。