コロナ第5波と五輪に
因果関係はあるのか

 そもそも、ここにきてなぜ新型コロナ感染者数が爆発的に増加をしたのか? 多くの国民がこの状態を引き起こしたのは五輪開催だと考えているにもかかわらず、菅義偉首相は早々に第5波と大会の因果関係はないと明言しました。また、小池百合子都知事も五輪による人流の増加を否定しています。

 永田町の常識は世間の非常識だといわれています。総務省の接待問題が発覚した直後にも、調査を行う前に武田良太総務大臣が「放送行政がゆがめられたということはまったくない」と先に結論を主張しました。それからどんどん接待の事実が発覚し、総務大臣自身もNTT社長と会食していたことが判明します。これと同じで、感染経路の全体像がよくわからなくなったと言っておきながら「因果関係はない」とは無責任な発言です。

 実際、政府がお祭りを主催しているのに国民が外出を控えるわけがありません。にもかかわらず「関係ない」と早々に主張したせいで、国民はリーダーの言うことにますます耳を貸さなくなる。

 忖度(そんたく)なしに状況を整理すると、菅首相が「安心安全」と宣言して開催した東京五輪は、実際には安心でも安全でもない状況下での開催でした。理由はデルタ株の流行です。デルタ株自体は5万3000人規模で入国した五輪関係者が持ち込んだ分もありますが、それ以前から国内で流行をし始めていました。

 その視点で見れば、第5波が起きた大半の原因は五輪関係者の入国よりも、五輪開催に伴う人流の増加でしょう。そして、デルタ株とそれまでのコロナの大きな違いは「他人に感染させやすい」という点です。