競技人口増加のために代表強化は必至
澤が就任不可のパリ五輪までに抜本策を

「指導者に興味を持ったときに資格は必要ですし、ある意味でサッカーをより深く考えるためにも、ライセンスを取るというのはすごくいいことだと思うので。今後をじっくり考えながら、自分の気持ちがそこにあればぜひライセンスは取りたい」

 引退会見でこう語っていた澤さんのなかで、まだ機は熟していないのだろう。引退前に結婚し、引退後に母親になって久しい澤さんが、ライセンスを取得し始めたという一報は届いていない。ゆえに、すぐになでしこを率いる姿も物理的には見られない。

 現役時代の澤さんが象徴としていた「10番」を東京五輪前に初めて託されたエースで、10年前の世界一を知る数少ない存在の一人になった28歳のFW岩渕真奈(アーセナル)は、スウェーデン戦後に涙をこらえながら必死に前を向いた。

「日本の女子サッカーが発展していく上で、やはり代表チームは強くなければいけないと思う。それぞれの選手がしっかりと、この悔しさを次につなげていきたい」

 中学生年代が極端に少ない競技人口のいびつな構造はなかなか改善されない。9月から日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が産声を上げるなかで、トップカテゴリーでプレーする選手を取り巻く、ピッチ内外の環境もまだまだ改善の余地を残す。

 日本の女子サッカー界が抱える問題点は少なくない。そのなかでもピラミッドの頂点に立つなでしこは2年後の女子W杯、3年後のパリ五輪を見すえて、世界から取り残されないための、監督交代を含めた抜本的な改革が待ったなしになっている。