選考段階で学生の「志望度」を高めていくことが必要
企業が多くの時間とお金をかけて行う“新卒者の採用活動”――内定(内々定)をせっかく出した学生に入社を辞退されてしまうのは大きな痛手だ。「内定者フォロー」に腐心する前に、企業経営者や人事担当者が心がけるべきこと、行うべきことは何か?
谷出 内定(内々定)が出た時に、学生がA社に決めきれないのは、その内定先に決めるための理由が学生の中にないからです。会社説明会以外でも、自社のことをきちんと知ってもらう機会を作り、学生が疑問や不安に思っていることを採用活動の過程で解消していくのが大切です。学生が「ここに入りたい!」と思うところまで志望度を高め、採用担当者がそれを理解したうえで内定(内々定)を出すのが理想。“会社説明会を行って、2回の面接をして内定(内々定)を出す”というふうに、企業側で選考フローががっちり固まっていると、学生の志望度がそれほど高くない状態でも内定(内々定)を出していることがあります。志望度があまり高くなければ、「最終面接の前に先輩社員と会ってみますか?」「社内見学をしますか?」…と、個々の学生に向き合うのもありでしょう。しかし、多くの企業は、固定化したフローを重視し、「内定(内々定)をとりあえず出して、その後でフォローしよう」というスタイル。「内定者フォロー」の目的となっている「内定辞退」をなくすためには、まず、採用段階において、学生の志望度を高めることが重要です。
多くの企業は、会社説明会から面接を経て“学生の志望度が高まること”を期待するが、それは学生の意思次第で、結局、企業は「待つ姿勢」に留まることが多いようだ。
谷出 会社説明会を実施し、面接(選考)を行い、内定(内々定)を出すまでに企業が就活生に行うべきことが3つあります。1つ目は会社を理解してもらうこと、2つ目は理解してもらったうえで、「この会社で働きたい」と思ってもらうこと、3つ目は入社志望の学生が自社に合うか合わないかの判断をすること――たいていの企業は2つ目までを会社説明会で終わりにします。説明会でひととおりのプレゼンテーションをするものの、学生が「この会社で働きたい」と思うかどうかは本人次第となります。そして、そのまま、3つ目の段階となり、面接のみの見極めで、企業側は「合う・合わない」を判断しようとします。面接官は学生にいろいろな質問をして、自社に合うか合わないかの判断をしていきますが、人気企業でない限り、学生が面接を通じて「この会社で働きたい」という意欲を高めることはほとんどないでしょう。つまり、「この会社で働きたい」気持ちが高まらないまま、一次・二次・最終面接があって、内定(内々定)が出るという流れになっています。