オンラインにおける「内定者フォロー」の成功事例は…

 コロナ禍にある、昨年2021年度(21卒)と今年2022年度(22卒)の就活生――21卒の有効求人倍率*5 は、リーマンショック(11卒~14卒)ほどの低数字ではなかったものの、企業の採用活動には大きな変化が生じた。すでに始まっている22卒の「内定者(内々定者)フォロー」も例外ではない。

*5 リクルートワークス研究所による、2021年3月卒業の大卒求人倍率(大学院卒含む)は、1.53倍(20卒は1.83倍)。(2021年4月27日公表「第38回 ワークス大卒求人倍率調査」より)

谷出 たとえば、「内定者フォロー」の一環で内定者(内々定者)たちを集める場合もコロナ禍でかたちを変えざるを得なくなっています。一昨年(20卒)までは、内定者を会社に呼んで、みんなが一緒にできる課題を行わせたり、夜に(採用担当者が)飲みに連れて行って同期の結びつきを強めたりしましたが、コロナの影響でそうしたことができなくなりました。昨年は内定者のオンライン飲み会を行った企業もあったようですが、あまり効果的ではなかったようです。自分で飲み物を用意した学生に経費精算の手間が発生したり、「事前にクオカードを郵送するのはお金をばらまいているカンジでポジティブになれない」といった人事担当者の声もありました。

 一方、「内定者フォロー」をうまく進めた企業はどういった施策を行ったのか?

谷出 昨年度(21卒)は、オンラインでの「内定者フォロー」がメインだったので、「人間関係」が作りにくかったようです。内定者同士の繋がりは大切で、どういうメンバーが同期なのかを知ることが重要。でも、リアルな対面で会うことができない。結果、オンラインでのやりとりになるのですが、オンラインでは非言語的な情報が伝わりにくいので、事前に内定者一人ひとりにパワポ1枚で自己紹介シートを作ってもらい、全員分を人事部(採用担当者)が集めて冊子にし、内定者に郵送したケースがありました。そこは内定者100人規模の企業で、学生が冊子を開きながらオンラインでコミュニケーションを取り、スムーズな「内定者フォロー」が行えたそうです。自己紹介の動画を内定者自身に撮ってもらい、それをYouTubeの限定公開にして、相互理解を深めた企業もありました。「内定者フォロー」の一日だけではなく、前後のスケジュールの中で何ができるか…そのプロセス自体が「内定者フォロー」になるといいですね。オンラインでみんなが顔を合わせる前にどういうことをしておくのが良いか、イベント的な一日が終わった後にどういう情報を発信すれば「内定者フォロー」になるのか、それを企業が考えていくことがコロナ禍では必要でしょう。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会にこれから出る学生の就労観に強い影響を及ぼしている。上司の目が届きにくく、同僚との雑談も減るテレワークでは、仕事のプロセスよりもアウトプット(成果)が求められ、コミュニケーションが希薄化した職場環境は新入社員に大きな不安をもたらす。そうした状況下で、「内定者フォロー」には、多忙な採用担当者を助けるツールと学生に安心感を与える先輩社会人の存在が不可欠だ。「学生と同じ方向を見て、一緒に歩いていく姿勢が企業には大切」――谷出さんは、その言葉を繰り返した。