「母の病名が読めない」中国・14歳の金メダリストが痛感させた格差の実態金メダルを獲得した中国代表・全紅嬋選手 Photo:VCG/gettyimages

東京オリンピックが閉幕。中国代表団は、38個の金メダルを獲得した。中でも中国国内で大きな注目を集めているのが、14歳で金メダリストとなった女子高飛び込みの全紅嬋選手である。彼女は、中国農村部の貧困家庭出身。全選手の生い立ちやインタビューでの発言は、中国の人々に改めて社会に潜む格差の実態を突き付けたのである。(日中福祉プランニング代表 王 青)

中国人を驚かせた
14歳金メダリストの回答

「東京オリンピック」が幕を閉じた。中国はアメリカに次いで、メダル獲得数2位と好成績を収めた。金メダルを獲得した選手たちは、帰国後、国の英雄として迎えられる。とりわけ中国国内で大きな注目を集めているのが、今回の中国代表団で最年少、14歳で女子高飛び込みの金メダルを獲得した全紅嬋(ゼン・コウセン)選手である。

 一体、なぜ全紅嬋選手にこれほど注目が集まったのか。

 8月5日に行われた女子10m高飛び込み決勝で、全選手は審査員全員が満点を付ける演技を2度も披露。466.20点の高得点で圧倒的な力を見せつけ、優勝した。飛び込んだ瞬間に水しぶきがほとんど上がらない完璧な演技が世界中を驚かせた。

 中国でもその演技動画が数千万回再生され、人々は興奮した。「天才少女だ!まさに奇跡」「まるで人魚のようだ、美しすぎる!」と、全選手を称賛する声が絶えなかった。

 しかし、中国の人々にさらなる衝撃を与えたのが、金メダルを獲得した全選手へのインタビューである。

 金メダリストの定例インタビューといえば、中国の選手たちにとっては以下のような受け答えが常とう句となっている。

「党と国に感謝申し上げます。決して、これは一人の個人の名誉ではありません。長年育てていただいた国と教えてくれたコーチのおかげです!」

 ところが、全選手はあどけなさが残る口ぶりで、全く型破りな受け答えをしてみせた。