「どうしてよくできたかというと、一生懸命練習するだけよ。お母さんが病気だけど、なんの病気か分からない。病名の字が読めない。だからたくさんのお金を稼いで、お母さんの病気を治してあげたいの」

 そして、「金メダルを取って、これからはまず何をしたいと思いますか?」の質問に対しては、

「辣条(辛いポッキーのようなお菓子)を食べたい。動物園と遊園地へ行ってみたい。行ったことがないから。クレーンゲームでぬいぐるみをつかんでみたい…」

 この答えに中国国民は驚き、感動し、多くの人が涙を流した。

「なんて素朴で、親思いの子だ!心が痛む〜」
「涙が出た!抱きしめてあげたい…」
「まだ幼いのに、こんなに家のことを背負っているとは!」
「14年の生涯に一度も動物園や遊園地に行ったことがないなんて、考えられない…」

農村部の貧困家庭に生まれ育つ
金メダル獲得で多額の奨励金申し出

 中国は高い経済成長を遂げた。世界第2位の経済大国となり、人々は豊かになった。また、特に都市部では一人っ子が多く、子どもはその家の宝物だ。「小皇帝」や「小公主」といわれるほど特別な存在であり、欲しいものはすべて与えられる。多くの人がそれが当たり前だと思っていた。そうした中で、中国は格差が大きい国であるという認識があったとはいえ、努力で世界一を勝ち取った14歳の少女の言葉と、その決して裕福ではない生い立ちを改めて目の前に突き付けられ、人々には大きな動揺が広がった。「すごいぞ、わが国!」のイメージとはあまりにかけ離れているからだ。

 全選手の実家の様子も、SNSで明らかになった。

 彼女は、中国広東省の農村、湛江にある小さな村で生まれた。彼女は兄弟5人の真ん中である。7歳のときに偶然スカウトされ、体育専門学校に採用された。村には約400世帯が暮らすが、1人当たりの平均年収は1.1万元(約18.7万円)。村の全世帯のうち約1割は生活保護を受けているという。全選手の家もそのうちの一軒だ。