4. 交流の場において疎外感を味わいたくない

「疎外感を感じる」というのは、通常は雑談の場に3人以上がいるケースと思います。交流会や会議の合間の休憩時など、何となく誰かと立ち話をしていると少しずつ人数が加わり、気づいたら複数人で輪になって話していた。早口の英語で会話が進み、言葉を発するタイミングがなかなか見つからない…。または、思い切ってその輪に入ってはみたけれど、うまく会話に参加できない…、こうしたケースは少なくありません。

 その場合の私のオススメは「リアクション係に徹する」ということです。英語に苦手意識を持っていると、積極的に自分から切り込んで話をリードするのはなかなかハードルが高いことです(私も今も苦手です)。このような時には、ひたすら話を聞いてリアクションするのです。「うんうん」とうなずくだけでも十分ですが、もう少しかんばりたいかたは、

 I agree!(その通り!)
 That’s hard.(それは大変だね)
 I feel for you.(気持ちわかるよ)

 など、相手の話に「合いの手」を入れる短い言葉を覚えておいて、タイミングの良いときに発してみるのもいいでしょう。

 会話というはご存じの通り、「話し手」だけでは成立しません。「聞き手」がいて成り立つものです。自分は「聞き手」を担うことによって会話に参加しているという意識を持ち、リアクションすることで、会話にしっかりと参加していることをアピールしましょう。

5. 間が持たず、「気まずい雰囲気」が流れるのを避けたい

 実は「英語の雑談が苦手」というお悩みの中でも一番多いのがこれかもしれません。

 とくに「話したいことや聞きたいこと」があるわけでもなく、相手に「自分の印象を残したい」というほどの思い入れがあるわけでもない。でも、何かのきっかけでたまたまお隣や目の前に外国人のかたがいるので、何か話さないと間が持たない、というような状況です。

 以前、海外出張を頻繁にしていたころ、気づいたことがあります。出張先での雑談の場で、

 Which movie did you see?(機内では何の映画を見たの?)

 という質問を、複数人からされたのです。海外出張では、フライト時間が長いため機内で映画を見る人は多いかと思います。そのため、海外から渡航してきた人への会話のきっかけとして、この質問は便利なのでしょう。

 この時に私が気づいたのは、英語がネイティブの人たちも、必ずしも雑談が得意なわけではないということです。

 考えてみたら、私たちだって母国語である日本語で雑談していても、間が持たなくて困ることってよくありますよね。英語がネイティブの人たちも同じなんです。

「機内で何の映画を見たの?」という質問を用意しておけば、気軽に会話のきっかけをつくりやすく、もし自分もその映画を見ていればそこから話が広がるかもしれませんし、見ていなくても映画のストーリーを聞くことで間を持たせることができます。雑談に慣れている人は、そのように定番の「雑談ネタ」をいくつか持っているのです。

 そのほか、海外の雑談でよく聞かれた質問を振り返ってみると、ざっと以下のような感じです。

 When did you arrive?(いつ到着したの?)
 How long you will be here?(いつまで滞在しているの?)
 Where do you stay?(どこに泊まっているの?)
 How do you like it here?(ここは気に入りましたか?)

 こうして書き出してみると、本当にたわいのない質問ばかりです。逆に、日本を訪れている外国のかたに対してであれば、上記に加えて

 How many times have you been to Japan?(日本を訪れるのは何度目ですか?)
 Did you find any favorite food?(お気に入りの食べ物は見つかりましたか?)

 なども良いでしょう。そのほか、海外のかたと雑談していてよく聞くフレーズは

 I would love to visit your country.(あなたの国に行ってみたいです。)

 ですね。これは社交辞令という感じですが(笑)、「行ってみたい」という気持ちは嘘ではないのかもしれません。このように、海外のかたと話すときのために、定番の「雑談ネタ」を2〜3つ用意しておくと、雑談時のヒヤヒヤや苦手意識はだいぶ軽減されるはずです。当たり障りのない質問であれば汎用性もありますし、そこから深い話に発展しなくても何も気にすることはありません。あくまで「雑談」なのですから。

過度に萎縮せず、心穏やかに
スキルに見合った開き直りも大切

 日本語でも「緊張する場面でうまく話せなかった」という経験は誰でもあると思います。

 言語はメンタルと非常に関係が深いもの。そもそも、母国語ではない言語で何かを成し遂げようとすることは、それだけでものすごくストレスがかかるものです。

 苦手意識というものは、気持ちを萎縮させます。萎縮すると余計に話せなくなります。そのため、「英語に苦手意識がある」とか「雑談は得意ではない」というかたは少しでも、平常心で、心穏やかにその場を過ごすことができるよう、工夫を施すことが大切です。

 その工夫のひとつが、前述の通り、「自分は何を達成したいのか」を明確にしておくことです。英語での雑談の場でたとえ上手に会話を運べなくても「今回はよし」とする、そのような図々しさを持つことも大事です。母国語ではない言語を使いこなせるようになるためには、最初から完璧を目指さず、今の自分のスキルでできる範囲で最大限にがんばればいい――。そのような一種の開き直りも大切なのです。