病気であることで得をする疾病利得とは
──「ファッション発達障害」の風潮について、バク先生はどう考えていますか?
バク:発達障害を名乗るくせに「本当にそうだったら嫌すぎる。人生終わっちゃう」みたいに言うから、最初にそういう意見を聞いたときは、精神科医としてもADHDの当事者としても、めちゃくちゃ腹立ちましたよ(笑)。
やっぱり、疾病利得ってあるんですよね。病気であることで得をするという状況が生まれるんです。すごく使いやすい言い訳になってしまっている。遅刻しちゃった、でもしょうがないよね、だってADHDだもん! みたいな。
──当事者ではないのに生きづらさの言い訳として発達障害を名乗る「ファッション発達障害」の人が増えてしまうと、本当に苦しんでいる人が余計に苦しくなってしまいますよね……。自ら発達障害であると言い訳として宣言するような人は、そもそも困っていない可能性もあるのかなと、今お話を伺っていて感じました。
バク:うん、他の人に言わないといられないくらいしんどいなら、病院に行ったほうがいいと思います。第一、病院に行って体調を整え、パフォーマンスがいい状態を保つのは、成人が社会人として生きていく上で絶対に必要なことじゃないですか。
少し厳しい言い方になりますけど、「定型発達の人が発達障害に合わせてくれ」という根本的な考え方が間違っているんですよ。どちらかといえば発達障害の方がマイノリティなので、マジョリティに寄せていくためにどうしたらいいか? を考えないといけないのに、「私は発達障害なんだから許されるべきだ」という主張は、傲慢と言わざるを得ないですよね。
──体調悪いなら治してくださいという、当たり前のことですよね。
バク:うん。だって「咳と微熱があって辛いんだよね~」と文句言いながら仕事している人がいたら「病院行きなよ」と言いますよね。「あ、でも病院に行って肺がんって診断されたら怖いしやめとくわ」とか言われたらイライラするじゃないですか。それは発達障害も一緒なんですよ。
もちろん、メンタルの病気で病院に行くなんて……と、尻込みしてしまう気持ちもわかります。人それぞれ事情は異なりますし、さまざまな要因から病院に行くことができない、という人もいらっしゃるでしょう。でも、心から症状に苦しんでいるのに病院に行く勇気が出ない、つい先延ばしにしてしまうという人がいるのなら、ぜひ受診してもらいたいです。私自身も、きちんと治療して生きづらさが改善された当事者なので、なおさらそう思いますね。