「女子美付属」の志願者数が年々増えていった理由体育と美術が融合する運動会は自己表現の場でもある。とりわけ、応援合戦(写真)では美術大学付属校ならではの持ち味を発揮 写真提供/女子美術大学付属高等学校・中学校

教員の思いを形にした3つの改革

石川 校長になって、予算を見てまず驚いたのが運動会でした。公立校とではケタが違う。会場のさいたまスーパーアリーナを借りるだけで数百万円かかりますから。うちは体育大学の付属かと思いました(笑)。大人気で、3000人収容の会場が満杯になります。

 6月下旬に運動会に初めて行きましたら、これがまた面白いの。出し物が美術的で、応援合戦なんて、天使が出てきて童子が出てきて、赤かと思えば黒になり、衣装も早替えのスナップボタン一つで4秒に1回変わる。保護者もみんな衣装をそろえて、まるでジャニーズのコンサートの応援みたいでした。

 これをきっかけに、付属校のおカネは一体どうなっているのか調べてみたら、ありがたいことにICT教育のために100周年記念で集めた同窓会の募金が残っているのを7月に見つけました。私、これ全部使ってしまおうと思って。

――ホームルームの教室を拝見しましたら、全部電子黒板になっていますね。

石川 ロビーに100万円以上する移動式の電子黒板が2台置いてありました。「これ、何?」って尋ねたら、エレベーターに入らないから持ち運びできず、誰も使っていないという(笑)。

 私のコンピューターの面倒見てくれていた若手の数学の先生に、「ちょっとあなた、ICTやりたくない?」って尋ねたら、「やりたいです!」って言うのよ。いいでしょ。それで、あの電子黒板、階段で運んで中学の授業で使ってみてと。壊れたりしても構わないからって。

 夏休み明けからやってみたら、これはいけそうだというので10月にはICT推進チームを募集して、校長室で待っていたら、その数学の先生以外にも5~6人がすぐ集まってくれました。

「千万円単位の予算をあげる」と言いました。半分までは補助金が出るというので事務に申請してもらって工事の手配も急ぎ、まずWi-Fi環境を整えました。私はコンピューターのことが何も分からないので、「かっこいいのにしてね」と言ったら、12月にはiPadを生徒と活用する仕組みを考えてくれた。ところが、教員の端末は例の募金で買うわけにはいかないというので、先生方の個人研究費を充ててもらいました。

――それで一挙に校内のICT化が進んだのですね。

石川 年が明けて1月に端末が届いたら先生方がうれしそうで。研修を重ねて7月からは職員会議もiPad持参でペーパレスになりました。次の年の4月からの新入生にもiPadを購入してもらって、計画してから1年ちょっとでICTの導入となりました。先生方はやる気十分ですから、何か私がちょっと旗を振ると、教員も事務方もわっと動いてくれます。