「女子美付属」の志願者数が年々増えていった理由階段横やエレベーター前など、校内のさまざまなところに生徒の作品が展示されている。「壁を取る」ことを励みに制作に励んでいる

付属校の力を伸ばす

石川 中1の道徳の時間に話をしてくれと言うので、「女子美付属に来て何を学んだか教えて」と生徒に聞いたら、「絵には“描き方”がない。一人一人違っていいということが分かりました」と言うの。「あなた、それ、誰かに『言いなさい』って言われたの?」っていうくらい驚きました。

 赴任してから授業を見に行きましたが、つまらない科目がない。全部教科横断型だし。社会科ではiPadを見たりして紙粘土でモロッコとか中国、イギリスの街並みを作らせて。

――それは教科間で合意を取って何かをやったりしているんですか。

石川 そういう統一的なものはなかったみたいです。理科の先生も元素表の中から生徒がピンとくる元素を見つけて、それでキャラクターを作らせたりしていましたし。数学科では多面体を理解するのになかなかすごい折り紙を作ったり、どの先生も工夫を凝らしています。

――美術と英語とICT教育以外に、女子美付属として考えていることはありますか。

石川 STEAM教育と呼ばれている中で足りないのは、理数系のS(Science)とT(Technology)だと思っています。技術系の大学との連携をどのように進めていけばいいのか。

――昔からお付き合いのある順天堂大学などいかがですか。

石川 順天堂からは校医も来ていただいています。大村智名誉理事長の北里大学とも仲良くさせていただいております。美術教育が主体なので、そこにプラスできる建築とか、映像系や3DCGなどでもいいのかなと思っています。

 うちは国公立大や早慶の合格者を増やすだけの学校にはなりません。起業する子や、大企業の総合職や営業企画部門に就職できる子がいたらいいなと思っていますが、あくまでも面白い美術系の学校として。私、美術の力って、それくらいあると思っていますので。

――「美術の力」ですね。とにかくユニークな存在であることが一番だと。

石川 それは創立以来変わっていないと思います。美術をやっていると一生楽しいですよ。小6の親御さんにも、ちょっと絵が好き程度では入ってからつらくなることもあると思うので、うまくなくて結構です、お絵描き大好き、ものを作るのが大好きって言えるようにして来てくださいと言っています。こちらで18人もいる優秀な美術科の先生たちが上手に教育するから、安心して受けてくださいと。

 魅力的な生徒に囲まれ、やる気いっぱいの職員室と事務室、そして大学法人の全面的なバックアップがあり、女子美の校長は幸せです。私は付属校の内部からこれからの校長を出したい。いままでは大学から校長がいらしていましたが、この激動の時代に、中学高校の教育・生徒を知らなければ学校が回らないだろうと思います。人材をちゃんと育ててくれと理事長からも言われ、いま一生懸命これからを考えているところです。