レガシーシステムの構築と保守を食いぶちとして生きてきた大手ITベンダーの代表格であるNECと富士通は、大規模な再編やリストラを余儀なくされてきた。デジタルトランスフォーメーション(DX)はいわば、大淘汰の開始を告げる新たな号砲だ。クラウドの普及やデジタル化の波を越えて生き残れる企業や人材とは――。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#3では、リストラの全貌と業界の再編未来図を余すことなく伝える。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子、竹田幸平)
NTTデータ、NEC、富士通、日立に荒波!
リストラ全貌と再編未来図を大公開!
ITベンダーの業界に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という名の大波が訪れている。ITベンダーとは、システム開発などを手掛ける企業で、大手にはNTTデータ、NEC、富士通、日立製作所などがある。
足元ではコロナ禍がデジタル化を後押しし、業績や株価は好調なITベンダーも多く、就職活動では学生の人気も高い。システムエンジニア(SE)の人手不足も叫ばれる中、一見「手堅い成長産業」として捉えられているのだ。
だが、実は喜んでばかりいられない。というのも、今後、ITベンダーが大きな変容を迫られるのは確実だからだ。
人月投入で大型の開発や保守・運用まで手掛けるという日本の大手SIer(システムインテグレーター)のモデルは、独自の発達を遂げ過ぎてしまった。悪くいえば顧客の言うことを愚直に遂行するだけの「ご用聞き」的なマインドや方法が染み付いていて、個人も企業ももはや競争力が保てなくなりつつある。
そして「ご用聞き」をしつつも、したたかに顧客をシステムで囲い込んできたわけだが、その姿勢に「ノー」を突き付ける企業や官庁は後を絶たない。
実際、9月に発足したデジタル庁の一つの狙いは、NTTデータやNEC、富士通、日立など特定企業数社が政府の情報システムの受注を独占する「ベンダーロックイン」の切り崩しにあることは、周知の事実だ。
当然だが「求められる人材」も変わる。あらゆるシステムにおいてオンプレミス(自前のサーバー保有)からクラウド活用へと流れていて、SEに必要とされるスキルも急激に変化しているのだ。
襲い掛かる荒波に対して、業界内にはいまだに「不要論は昔からいわれてきた。日本では結局生き残るのでは」(大手上場ITベンダーの中堅SE)といった見方も根強い。
だが、実際のところこの数年で幹部級を含むIT人材の出世ルートや転職市場には、新たなトレンドが生まれている(詳細は本特集の#11『ITベンダー「出世の新ルート」は幹部から事業会社への転身、SE転職最新事情も徹底レポート』、10月11日〈月〉配信)。気付いている会社や目ざとい個人は、既に動いているのだ。
DXの美辞麗句に惑わされて本質を見誤ると、世紀のビッグウエーブに乗っていたつもりが、気付けば大淘汰の荒波にのみ込まれていた、という危機にも陥りかねない。変化に対応できなければ企業も人材も、シビアな目でふるいにかけられていくことは不可避だ。
そこで次ページ以降、大手ITベンダーの事業再編をひもときながら、進行中のリストラ策の全貌や実名入りの再編未来図を詳解していこう。