政府が進めるデジタル改革の狙いの一つは、官公庁システムのITベンダーヘの「丸投げ依存」をストップすることにある。NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所ら大手ITベンダーが他企業の参入を遮る「ベンダーロックイン」の支配構造の問題は根が深い。デジタル庁が、旧来の商習慣を断ち切ることは容易ではない。特集『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』(全7回)の#5では、デジタル庁vs抵抗勢力の壮絶な戦いに迫った。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
デジタル庁が宣戦布告!
「大手ベンダー排除」ゲームの幕開け
「政府の情報システムに貼りついた大手ITベンダーをどうやって“剥がすか”というゲームがこれから始まります」
辛辣な予言を披露するのは、9月に発足するデジタル庁の発足準備に追われている内閣官房IT総合戦略室の幹部だ。政府のITシステムの調達改革で、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所といった大手ITベンダーは厳しい立場に立たされるとみている。
デジタル庁が狙うのは、1990年代から続いてきた「官庁と大手ベンダーとのなれ合い」を断ち切ることである。政府の情報システムの調達では、「お抱えベンダー」に開発・保守運用を丸投げする商習慣がまかり通ってきた。特定のITベンダーが独自仕様でシステムを囲い込み、他社の参入が困難になる「ベンダーロックイン」に陥ってきたのだ。
冒頭の幹部は、「ベンダーへの発注能力が欠如している」(大手ベンダーの下請け企業)と批判にさらされてきた省庁の出身官僚だ。長年のベンダー支配から脱却しようという強い意志がにじむ。
「大手ベンダーは政府のシステムをオンプレミス(自前保有)のまま囲い続けようとするだろうが、それを続けていては政府のシステムの技術がどんどん陳腐化する。許すわけにはいかない」(冒頭の幹部)と意気込んでいるのだ。
すでに水面下では、デジタル庁と大手ベンダーとの壮絶なバトルが始まっている。