不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰#16Photo:SOPA Images/gettyimages

長らく低迷期が続いた富士通とNECだが、DXの波を捉えるべく大改革のさなかにある。強みが見えづらい「百貨店型」とも評されてきた両大手SIer(システムインテグレーター)がどう変わろうとしているのか。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の最終回では、富士通自身の全社DX改革を主導する福田譲執行役員常務、NECの吉崎敏文執行役員常務にそれぞれ内幕を聞いた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

トップ交代を機にDX改革を加速
足元は復調ぶりが鮮明も先行きは?

 パソコン、携帯電話、半導体……。過去10年でハード系事業を次々と切り売りし、今や巨大なITベンダーへと姿かたちを変えたのが富士通とNECだ。新たな収益源を築くのに苦戦し、リストラを重ねるなど低迷が続いてきたが、ここにきて株価や業績の復調ぶりが目覚ましい。

 何しろ、富士通の株価は今年9月に約21年ぶりの高値、NEC株は4月に約15年ぶりの高値を付けた。好調さは業績に裏付けられており、両社とも2021年3月期は純利益が過去最高を更新。共に、高速通信規格「5G」基地局の需要増が追い風となった形だ。

 ただし、先々を見据えると喜んでばかりもいられない。

 産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)が本格化し、SIer(システムインテグレーター)の提案力が重要となる中、野村総合研究所やアクセンチュアが「IT×コンサル」のビジネスモデルで先行。こうしたライバル勢に比べ、「本質的な差別化要素が見いだしづらい」(証券アナリスト)。富士通もNECもITサービス領域を大量の人月投入で幅広く請け負う「総合百貨店型」ののれんを掲げてきたからだ。

 ベンダー淘汰の波が着実に訪れる中、座して待つばかりでは競争環境が厳しさを増すばかり。もちろん2社ともこうした変化を認識しており、トップ交代を機に改革を加速中だ。富士通は19年に社長へ就任した時田隆仁氏、NECは今春から社長となった森田隆之氏の下、いずれも明確にDXを成長戦略の要として打ち出している。

 そこで変革の成算を確かめるべく、時田氏に誘われSAPジャパン社長から20年に富士通へ転じた福田譲執行役員常務、日本IBMでAIシステム「ワトソン」の事業責任者だった前職から19年にNECへ移った吉崎敏文執行役員常務を直撃。

 DX推進を担う両幹部へそれぞれ「脱・何でも屋SIer」に向けた戦略を聞くとともに、ITベンダーのトップアナリストによる2社の24年3月期までの事業別売上高・営業利益見通しを明らかにする。