不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰#11Photo:Hiraman/gettyimages

大手ITベンダーから事業会社に幹部級人材が続々と移る「出世の新ルート」が判明した。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#11では、その実態をレポートするとともに、人材難が叫ばれて久しいシステムエンジニア(SE)の転職市場動向について、トップヘッドハンターを直撃し最新事情を聞いた。年収爆上げの秘訣とは?(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

業界時価総額トップの中外製薬
DXをリードするのは元IBM幹部

 ITベンダーを襲う淘汰の荒波は、人材の流れにも地殻変動を起こしている。幹部レベルから現場のエンジニアに至るまで、これまでとは異なる新たな出世ルートが生まれているのだ。

 特に、この数年で登場してきたのが「ITベンダーから事業会社への転身」というキャリアチェンジの形だ。その一人が、製薬業界で売上高首位の武田薬品工業を抜き去り、今や時価総額ナンバーワンとなるなど勢いに乗る中外製薬の志済聡子氏だ。

 同氏は2019年、外資系ベンダーである日本アイ・ビー・エムの執行役員から中外製薬の執行役員(デジタル・IT統轄部門長)に転じ、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を担当。創薬力強化に向けた組織改革などをリードし、中外製薬は21年まで2年連続で経済産業省選定の「DX銘柄」に選ばれた(DX推進の具体的な内容は本特集の#15『中外製薬・ファンケルの幹部が明かす、DX勝ち組の「ITベンダー完全攻略法」』参照)。

 志済氏によれば、一昔前まで外資系ITベンダーの幹部は、他のベンダーに幹部として移るのが一般的だった。そして、大手日系SIer(システムインテグレーター)であれば、役職定年後に同じ企業グループの子会社などへ出向・転籍するのが王道だった。

 そんな従来の常識がなぜ、ここにきて崩れ始めているのか。次ページでは、ITベンダーから事業会社に移った主要企業幹部リストを実名で公開するとともに、その背景や今後について分析する。

 併せて、転職サイトのビズリーチに登録する約4600人の中から高パフォーマンスを残したヘッドハンターに送られる2021年の「JAPAN HEADHUNTER AWARDS」で、IT・インターネット部門のMVPを受賞した松井健治氏(フューチャーリンク代表取締役)を直撃し、システムエンジニア(SE)の転職事情を聞いた。

 年収爆上げの秘訣とは?次ページ以降、トップヘッドハンターが肌で感じる価値が上がる人材・要らなくなる人材、理想的なキャリアの築き方までを詳解していこう。