不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰#13Photo:SOPA Images/gettyimages

国内の金融分野や政府系案件を牛耳るプラットフォーマー的な存在であるNTTデータは、強みとする独占的な体制に批判も付きまとう。このような事業モデルは持続可能なのか。IBMやアクセンチュアにはない二つの潜在能力とは?特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#13では、トップアナリストの見解を基に、成長の鍵を握る勝ちパターンの条件を解き明かした。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

国内の独占的体制に大逆風も
IBMやアクセンチュアにない強みが!

「国内の金融、政府系案件では圧倒的な強さを誇るからこそ、バッシングの対象となる」。市場関係者からこんな声が漏れる大手SIer(システムインテグレーター)がNTTデータだ。

 今や株価も業績も好調で、同社株はITバブル以来となる約21年ぶりの高値圏で推移。OpenWorkの就職注目企業ランキング(2022年卒男子学生)で全企業の1位に躍り出ているほどだ。

 株高と就活人気の追い風が吹く同社だが、もちろん泣きどころもある。それは、強さの裏返しである独占的な体制に批判が強まっていること、営業利益率が低く収益効率に課題を残すことだ。

 NTTデータは旧電電公社のデータ通信事業部を前身とする成り立ちもあり、元々「政府のIT部門」のような位置付けから成長してきた。大量の人月投入で開発を行い、囲い込みを続けてきたが、9月に発足したデジタル庁の裏目的には「ベンダーロックイン」と呼ばれる独占体制の切り崩しがあるなど、ここにきて風当たりが強まっているのだ。

 また21年3月期の営業利益率は6%と、本特集#10『ITベンダー「成長力&年収が高い」会社ランキング【全17社】2位NTTデータ、1位は?』で比較対象とした17社で下から2番目に低い。22年3月期は連結純利益の最高益更新を見込み、営業利益率は7.6%に高める計画だが、それでも2桁を下回る。

 そこで鍵を握るのが海外事業の行方。同社は買収戦略などを通じてグローバル化を推し進め、前期の海外売上高比率は4割弱と、規模だけを見れば、日本のITベンダーの中で頭一つ抜けた存在だ。

 さらに、海外は収益面で21年3月期に営業赤字となるなど苦戦し、長らく事業構造改革を迫られてきたが、21年4~6月期は初めて、海外事業が営業増益分(前年同期比77%増)の半分超を稼ぎ出すように。ITベンダー業界を担当するトップアナリストからは「構造改革が奏功する形で長年の低迷を脱した」(大和証券の上野真氏)との評価も聞かれるようになってきた。

 逆風が吹き付ける国内事業と、成長の萌芽が表面化し始めた海外事業とが綱引きしながら、この先どんなシナリオを描くのか――。

 次ページでは、トップアナリストによる24年3月期までの事業別売上高の予想値と、根拠となる成長ストーリーを掲示。そこからは、IBMやアクセンチュアにはなく、NTTデータだけが持つ二つの潜在能力が見えてきた。それらを生かした勝ちパターンの実現が成長持続には必須となる。