不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰#15Photo:Inthon Maitrisamphan/EyeEm/gettyimages

特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#15では、時価総額で武田薬品工業を超え、製薬業界の首位を走る中外製薬と、機関投資家からデジタル化を巡る取り組みの評価が高いファンケルのIT統括幹部を直撃。DX成功へ導くためにITベンダーといかに向き合うべきか自らの経験を踏まえて伝授してもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

ベンダー出身者がDXを進めた中外製薬
情シスの役割を大転換したファンケル

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に成功したのはたった7%――。これはアビームコンサルティングが昨年12月に公表した調査の結果だ。年商1000億円以上の企業で、DX推進の意思決定に関わる役職者(部長職以上)を対象にDXの成否を聞くと、その大半が「成功」と答えることができなかったのである。

 何しろ、DXとは単なるデジタルツールの導入にとどまらず、業務プロセスやビジネスモデルまでをITの力で変革すること。経営者の意思から組織体制まで大改革をする必要があるが、これまで情報システム部門(以下、情シス)が弱かった企業も多く、成果につなげるのは非常に難しいのだ。

 そこで、ここでは日本でも有数のDX成功企業との呼び声が高い中外製薬とファンケルのIT統括幹部を直撃し、社内システム改革で重要な「ITベンダーとの付き合い方」をどう変えてきたのか伝授してもらった。興味深いのは、両社でアプローチが全く異なることだ。

 まず、2021年まで2年連続で経済産業省の「DX銘柄」に選ばれた中外製薬は、「ITベンダー出身者がDXを進めた」パターン。同社は今や売上高首位の武田薬品工業を抜き、製薬業界で時価総額首位であるなど勢いが目立つ。19年に外資系ベンダーの日本アイ・ビー・エム(IBM)執行役員から、中外製薬の執行役員(デジタル・IT統轄部門長)に転じたのが志済聡子氏だ。

 機関投資家からDXへの評価が高いファンケルは「社内の情シスの立場を大転換させた」パターンだ。同社の植松宣行上席執行役員は新卒入社後、四半世紀にわたり社内のIT畑を歩んできた。一時は“ベンダー丸投げ”で情シスも風前のともしびだったが、ある時期を境にベンダーとの関係を抜本的に見直しつつIT内製化を推進。通販サイトの機能強化などを進め、今や情シスが各部門のデジタル化を主導する立場になったという。

 重要なのは両社共にITベンダーとの関係ががらっと変わったこと。ITベンダー幹部から転じた志済氏、立場の弱い情シスで悪戦苦闘を続けた植松氏が明かすITベンダーの「攻略法」とは?

 次ページ以降で紹介する大改革は、DXを巡り苦悩する企業の経営者と担当者はもちろん必見だ。さらに、クライアントとの関係に悩めるITベンダー側が「クライアントに切られない」ためのヒントも満載。二つのケーススタディーを詳解していこう。