今、新築マンションの価格が高騰しています。不動産経済研究所の調査によれば、2020年、首都圏の新築マンションの平均価格は6083万円で、東京23区に限れば7712万円(全国平均4271万円)。そんなバブルともいえる状況の中、住宅の問題をどう考えたらいいのか。賃貸か購入か、マンションか戸建てか、新築か中古か、悩みは尽きません…。そこで編集部では『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵さんと『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)の共著者で元国税専門官でマネーライターの小林義崇さんのお2人に、賢い住宅選びをテーマに対談していただきました。連載の第4回をお届けします(構成:書籍編集局/高野倉俊勝)。
居住用物件を売ったときに使える「3000万円の特別控除」
住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家 第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。不動産総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」代表。管理組合の相談や顧問業務、数多くの調査から既存マンションの実態に精通する。また、新築マンション情報など、マンショントレンドにも見識が深い。各種メディア、講演会・セミナーで活躍中。主な著書に、『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『「負動産」マンションを「富動産」に変えるフプロ技』(小学館)、『マンション管理・修繕・建替え大全 2021』(朝日新聞出版)ほか多数。
日下部理絵(以下、日下部) 家を売る時にも税金はかかりますか?
小林義崇(以下、小林) そうですね。家を売ると、その売却益に対して所得税と住民税がかかってきます。売ったからといって必ず税金がかかるわけではなくて、あくまでも買ったときの金額や、売るときにかかった費用と比べて、利益が出ているかどうかによります。利益がなく、むしろ売却損があるようなときは、税金はかかりません。細かい特例などを調べるより先に、そもそも税金がかかるかをチェックするのが先決です。
日下部 なるほど。そういうときに使える特例は、何かありますか?
小林 ややこしいことに、売却益がある場合に使える特例もありますし、逆にマイナスが出ているときに使える特例もあるんです。とりあえず、売却益が出ているパターンの方からお話しますね。
日下部 お願いします。
小林 例えば、2000万円でマンションを買って10年間住んで4000万円で売れたとします。そうなると、計算上利益が出ているので、通常は所得税・住民税がかかってきます。でも、居住用の物件を売ったときに使える「3000万円の特別控除」という特例があって、課税されるはずの所得金額が3000万以内であれば、税金が発生しません。
日下部 それはいい特例ですね。
小林 ただそれを使うには、確定申告が必要なんです。ほったらかしにしてたら、あとで税務署から申告漏れを指摘されてしまいます。
日下部 確定申告をしていなくても、利益が出ていることが税務署にはわかってしまうのですね。ちなみに、売却益が3000万円を超えていたら、税金がかかるんですよね!?
小林 はい。3000万円を超えた金額に対して、税金がかかります。例えば、相続してずっと持っていた物件などは、買ったときの値段や物価水準も違うので、売却益が3000万円を超えるようなことがあります。こういうときは、別の特例も検討したほうがいいですね。
日下部 別の特例があるんですか?
小林 同じく居住用の物件を対象にした、「買い換えの特例」っていうのがあって、「3000万円控除」と「買い換えの特例」は、どっちか選べるしくみになっています。例えば、古い住居を4000万円で売って新しく5000万円で家を買ったとします。このときに買い替え特例を使うと、仮に売却益が3000万円を超えていても税金はかかりません。
日下部 なるほど。
小林 ただ、いまメリットばっかり言ってたんですけど、気をつけないといけないことがあります。
日下部 なんですか?
小林 買い換えの特例を使うと、いったんは税金が少なくなったり、ゼロになったりするんですけど、将来的には税金が増えるしくみになっているんです。
日下部 えっ、どういうことですか?
小林 要は、買い替えの特例って、税金を減らすというより、先延ばしにしてるだけなんですよね。3000万控除と違って、買い換え特例は将来の税金に影響してしまうので、そこをあらかじめ考えておかないといけないですね。
日下部 なるほど、それはどっちが得か、よく考えないとですね。
小林 はい。だから、基本は3000万控除を考えた方がいいと思います。で、3000万円控除を使っても税金が出るってなったら、初めてその買い換え特例を調べて比較するといいですね。このあたりは複雑なので、税務署や税理士に相談したほうがいいと思います。