家を買うときも、売るときも、いろいろな特例がある

日下部 家を売ったときの税金について聞いてきましたが、他にも気をつけることはありますか?

小林 相続とか生前贈与の場合は、また全然別の税金の話になってくるので、分けて考えないといけないですね。生前贈与に対しては贈与税、相続に対しては相続税っていう税金があって、それぞれ期限も違いますし、手続きも違うので、チェックしておかないといけないですね。

日下部 チェックは、国税庁のホームページでっていう意味ですか?

小林 そうですね。売ったときの所得税は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をしますと。贈与については、贈与を受けた人が申告するんですけど、受けた人が翌年の2月1日から3月15日の間に贈与税の申告書を出します。相続税だけがちょっと特殊で、亡くなって10ヵ月以内に相続税の申告をするという形になります。相続税の申告は大変で、家の相続だけじゃなくて、他の現金とか預金とか株とか、亡くなった人のすべての財産などを調べて申告しないといけないので、早めに準備しといたほうがいいです。

日下部 なるほど。結構、めんどくさそうですね。

小林 そうですね。現金や預金を相続したとしても計算は簡単なんですけど、不動産の場合、評価っていう、いわゆる査定をしないといけないので。その不動産が相続税の計算上いくらの金額なのかを計算する手間もかかります。

日下部 不動産が遺産になると、分けるのも大変ですよね。ご兄弟がいて相続で、たくさん不動産とか持っている人だと、長男はこの不動産、次男はこれ、三男はこれ、みたいな感じで分けたりするんですかね。

小林 そうですね。まあでも、ケースバイケースですけどね。よくあるのは、「代償分割」っていって、たとえば家を長男が全部相続して、その代わり長男はお金を弟や妹に渡すというやり方をすることもありますね。

日下部 そういえば、昔、不動産を買ったときに、相場より安く出ていたんです。パッと見て明らかに相場より安いからなんかあるのかなと思ったら、売主さんにご兄弟がいて、そのお父様がたくさん持っていたらしいんです。それで、ご不幸があり不動産をもらって、親父は使ってたけど俺は使わないからという理由で。何かの期限があるから期限に間に合うよう安くしたって。なんの期限だったのかなって。

小林 もしかしたらその期限の話は、「取得費加算」っていう特例の話かもしれません。さっき家を売ったときに売却益に対して税金がかかるってお話をしたんですけど、取得費加算の特例を使えば、相続税の金額を経費に入れることができるんですね。それをするためには相続税の申告期限から3年以内に売らないといけないっていうルールがあるので、それかもしれないですね。

元国税官が明かす! 家を売ったとき、買ったときに損しないため、知っておくべきこと日下部理絵、小林義崇 著、サンマーク出版、定価1540円(本体1400円+税)

日下部 たぶんそれでしょうね。家を買うのも、売るのもいろいろな特例があるんですね。物件の選び方、買い方、住宅ローンの借り方など、そのちょっとしたコツを知っているか知らないかで、得したり損したりが変わってきます。
マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』や『すみません、2DKってなんですか?』などの本を事前によく読んでいただいて、皆さんには、ぜひとも賢い選択をしてもらいたいですね。

小林 本当にそうですね。「そんなの知らなかった!」なんて後悔をしないためにも、事前によく学んでおくことは、本当に大切だと思います。