「3000万控除」と「買い換え特例」は、
「住宅ローン控除」と併用できない
日下部 さらに、何かありますか?
元国税専門官、フリーランスライター、Y-MARK合同会社代表 西南学院商学部卒業後、2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応等に従事。2017年7月、フリーライターに転身。マネージャンルの記事執筆をはじめ、インタビュー記事作成やセミナーなどを行っている。著書に『すみません、金利ってなんですか?』『すみません、2DKってなんですか?』(以上、サンマーク出版)、『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社)等。
小林 あとは、いま言った3000万控除と買い換え特例って、住宅ローン控除と併用できないというルールがあるんです。要は、同じタイミングで使えませんよと。買い換えをする方は、基本的に家を売るのと家を買うのが、同時に発生すると思いますけど、売る家のほうに3000万円控除を使って、買う家のほうに住宅ローン控除を使おうとしても、認められないんですよね。
日下部 両方を同時に使えないのですね。
小林 はい。だから、どっちかを選ばないといけないのです。住宅ローン控除を使うんだったら、3000万円控除は使えない。だから売却益は特例なしで税金を払って住宅ローン控除を使うか、あるいは3000万円控除を使って売ったときの税金を下げる代わりに、住宅ローン控除は諦めるか。そんな選択をしなきゃいけないですね。ここは結構、将来の税額に影響してくるところなので、慎重に考える必要がありますね。
日下部 同じタイミングでは使えないけど、時期がちょっとずれると使える。そんなことはないですか?
小林 そうですね。新居に居住する前後2年間は、特例を重複して使うことができません。家を売る時期と、新居を買う時期ってほぼ同時期なので、特例を重複して使おうとしても無理ですよね。以前は、法律の抜け穴みたいな形で、期をずらして複数の特例を併用することは不可能ではなかったのですが、最近の税制改正で封じられてしまっています。
日下部 少し前までは、ちょっとずらして併用していた人を見たことがあります。
小林 節税スキームみたいなので一時期取り沙汰されてたんですけど、やっぱり対策がとられてしまったのです。家を短期間で売買するときは、このあたりは注意したほうがいいですね。
日下部 ざっくり言うと、併用はできないけど3000万円控除を使った人も3年ぐらい経てば、また使えるということですね。例えばA物件を持っていて、売って、そのときは住宅ローン控除を使わず3000万円控除を使いました。次にB物件を買って、また3年後とかに売るときは、あらためてB物件で3000万円控除が使えるってことですよね。
小林 はい。B物件の方は大丈夫ですね。ただ、実際には特例を使えるかは売却するときの税法によります。今後ルールが変わる可能性もあるので、とくに特例の条件は慎重に調べたほうがいいと思います。それによって、売却する時期や、引っ越しの時期などを考えたほうが安心ですね。
日下部 そうですね。