今、新築マンションの価格が高騰しています。不動産経済研究所の調査によれば、2020年、首都圏の新築マンションの平均価格は6083万円で、東京23区に限れば7712万円(全国平均4271万円)。そんなバブルともいえる状況の中、夢のマイホームをどう考えたらいいのでしょうか。賃貸か購入か、マンションか戸建てか、新築か中古か、悩みは尽きません……。そこで編集部では、『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵さんと、『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)の共著者で元国税専門官でマネーライターの小林義崇さんのお2人に、賢い住宅選びをテーマに対談していただきました。全4回にわたってお届けします(構成:書籍編集局/高野倉俊勝)。
東京23区の新築マンション
平均価格は、7712万円
日下部理絵(以下、日下部) いま、新築マンションの価格が上がっています。昨年、平均価格が6000万円を超えました。これは不動産バブル期の1990年につけたピーク値である6123万円にほぼ並ぶ水準です。東京23区に限れば7712万円にもなります。2010年からの平均値も出ていて、そのときは4367万円ということなので、1700万とか、1600万とか上がっていますね。それも平均の部屋面積は60平米くらいと、部屋もちょっと狭くなってきています。
小林義崇(以下、小林) 狭くなって、かつ値上がりしているのですね。
日下部 さらに、中古もちょっとずつ平均価格が上がってきています。2013年に平均2500万円だったのが、2020年には3500万近いので、中古でも1000万円ほど上がっています。
小林 理由は、やはり需給の関係で品薄だからですか?
第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。不動産総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」代表。管理組合の相談や顧問業務、数多くの調査から既存マンションの実態に精通する。また、新築マンション情報ななど、マンショントレンドにも見識かが深い。各種メディア、講演会・セミナーで活躍中。主な著書に、『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『「負動産」マンションを「富動産」に変えるフプロ技』(小学館)、『マンション管理・修繕・建替え大全 2021』(朝日新聞出版)ほか多数。
日下部 どちらかといえば需給でしょうね。いま新築をつくっても高すぎて売れないというのがあるので、三井、三菱、野村など体力のあるデベロッパーだけが、高値でも売れるように出し渋っているのです。だから新築の数がすごく少ない。普通に考えると高くて買えないですよね。それにサラリーマンの平均賃金も、そんなには上がっていないですよね?
小林 日本人のサラリーマンの所得は、そんなに増えてないと思いますね。
日下部 2012年が平均408万円で、2019年でも436万円くらいのようなので、7%弱くらいしか上がっていません。これだと、マンションの上昇率にはどう考えても追いついていないです。ただ、幸いにも低金利なので、それでなんとか買えているという状況でしょうか。
小林 いま、住宅ローンは変動金利が0.4%くらい、固定が1.2%くらいですから、ローンは組みやすくなっていますよね。
日下部 新築を買うのがむずかしい人は、中古に流れています。
小林 いまのお話の流れで言うと、給料が上がってないというところと、あと退職金がものすごく下がっているんです。正社員の退職金って、平成15年頃に平均2500万円くらいあったのが、平成30年で1800万円くらいまで下がっています。いままでは住宅ローンは長めに70歳ぐらいまで組んでいたけど、退職金で残った分を全額返済するみたいなプランができてたと思いますが、それはできにくくなっています。金利が低いからまだ買えていますけど、将来返済していくときに、ちょっと心配はありますよね。
日下部 金利って1%違うと、35年返済で考えると600万~1000万円くらい返済額が変わってきますか?
小林 そうですね。1%違うと数百万円、1000万円まで行くのかな、ちょっと借入の元本によりますけどね。でも、1000万円変わる可能性もあるでしょうね。
日下部 15年くらい前でも、金利は3%とか4%くらいしてましたよね。フラット35だと何%くらいでしたか?
小林 フラット35なら、3%くらいでしたね。
日下部 いまフラット35で1.5%くらいだから、やっぱり1%ぐらいは違うんですかね。
小林 そうですね。