物件を売った情報は、税務署には筒抜け

元国税官が明かす! 家を売ったとき、買ったときに損しないため、知っておくべきことPhoto: Adobe Stock

小林 いま不動産の価格が上がっているので、日下部さんのまわりには、売却損ではなく売却益が出ている人が多いと思いますが、特例の話が出たりするんですか!?

日下部 例えば、いまよく聞くのが、「部屋の間取りが1LDKぐらいで、45平米ぐらいなので、もともと住宅ローン控除が使えませんでした」というものです。割とDINKs(共働きで子どものいない夫婦)の方とか、おひとりの方が10年ぐらい前に買った物件の価格が結構上がっていて、例えば結婚するから売るとなったときに、皆さん住宅ローン控除はもともと面積が足りず使えなかったのですが、売るときに3000万円控除は使えて良かったというのは、最近よく聞く話です。

小林 そうなんですね。

日下部 特に十数年前って、女性のおひとりさまのマンション購入とかが流行ってた時代じゃないですか。男性もそうですけど。結構、立地のいいところに買って、10年ぐらい前だといまより全然、中古なのに買ったときより高く売れて、10年間の家賃が実質タダ。3000万円控除を使うとタダで住めて、税金もかからず、というのはよく聞きますね。

小林 そうですよね。売却益が出ている方も、住むエリアによっては出てきているので、そこは最近の傾向かもしれないですね。僕が税務署で相談を受けていたのは平成16年~17年頃なんですけど、当時はみんな損してたんですよ。

日下部 そうなんですね。

小林 売却益が出る人って、相続物件を売った人ぐらいしか見ませんでした。いまは日下部さんがおっしゃるように、マンションの値上がりとかで利益出せている方がいるので、最低限、3000万円控除は覚えておいたほうがいいと思います。税務署から、個別に「あなたこの特例使えますよ」みたいな案内はしないので。

日下部 たしか、売ったときはハガキとか来ますよね?

小林 「お尋ね」っていうハガキが来るんですよね。家を売ったときって登記をするので、法務局から情報が税務署に流れます。その情報を見て、不動産を売った人には税務署からハガキが送られてくるんですよね。内容は、どれぐらいで売れましたかっていうのをお尋ねするものなんですけど。

日下部 大体売ってどのぐらいで来るんですかね? 確定申告の前には来る?

小林 登記の時期によっても違いますが、普通は確定申告の時期に間に合わせるように発送されます。お尋ねのハガキにはそんな大した情報は書かれてないので、確定申告は必要なのかとか、どういう特例が使えるのかというのは、「譲渡所得の申告の手引き」というパンフレットが税務署や国税庁ホームページで見れるので、チェックしておいた方がいいですね。

日下部 以前、初めて物件を売ったときにハガキが来て、「あ、これがうわさの」と思ってドキッとしたんですけど、それと、決済があった日だったか翌日だったか、銀行から電話がありました。

小林 へえ、銀行から。

日下部 銀行って1000万円以上とかお金が動くと、電話がかかってくるときがあって。たまたまそのときは出られず、留守電に銀行から、要はお尋ねですよね。

小林 銀行もマネーロンダリングのチェックとかいろいろしているんでしょうね。

日下部 でも別に、留守電に入ってて、特に折り返しはいらなかったんです。1回かけるルールになってるんですかね。家を売ったら、銀行から電話はくるわ、税務署からハガキはくるわ、すごいびっくりしましたね。

小林 物件を売った情報は税務署には筒抜けなので、申告すべき人がしなかったら、あとで税務調査とかの流れになりますからね。そういうのは事前に調べておいたほうがいいですよね。

日下部 登記所から情報が行くという話でしたが、どんな情報なんですか?

小林 基本的には登記情報すべてです。登記って、売買とか贈与とか、原因も書かれているじゃないですか。だから、贈与だったら贈与税の担当が、売買だったら所得税の担当がチェックするという形です。最終的には、登記の情報と申告書の情報を突き合わせるんですが、何人かは売却益がありそうなのに確定申告をしてないんですよ。そういう人には電話をしたり、文書を送ったりして、場合によっては税務調査に移行します。

日下部 怖いですね…。

小林 そうですね。不動産を売却したときの税金というのは、結構大きくなるケースがありますからね。もし申告漏れとなると、追徴税もそれなりの金額になります。