サラリーマンなら、給料と自宅の売却損を合算して、
還付金をもらうことができる

元国税官が明かす! 家を売ったとき、買ったときに損しないため、知っておくべきことPhoto: Adobe Stock

小林 正直、不動産を売ったときの特例は複雑で、税務職員でも混乱してしまいます。例えば売却益が出た場合と違って、売却損が出た場合の特例は、住宅ローン控除と併用しても大丈夫だったりします。

日下部 売却益は併用できないのに、売却損なら併用できる!

小林 はい。たぶん一般的な住宅であれば、買ったときより値段が下がるので、売却損になりますよね。この売却損っていうのは、普通は税金の計算上はどこにも出てきません。税金はかからないので、確定申告の手続きも不要です。ただ、特例を使って売却損を確定申告すると、自宅の売却損を他の所得と合算することができるんです。だからサラリーマンの方であれば、お給料と自宅の売却損を合算して、還付金をもらうことができます。これも絶対使った方がいい特例です。

日下部 どこを調べると、いまの情報は書いてあるんですか?

小林 国税庁のホームページで、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」という形で説明されています。損益通算っていうのは他の所得と合算できますよっていうルールで、繰越控除とは、損益通算をしても使いきれなかった損があった場合に、残った損を翌年以降に繰り越すというものです。例えばお給料の所得が500万円だとして、自宅の売却損で1000万出たら、使い切れないじゃないですか、合算しても。じゃあ残った分をどうするのかっていうと、それを最長3年間繰り越せるんです。だからこれを両方、損益通算と繰越控除を使っておけば、最長3年間に渡って節税効果を受けられるっていうことになりますね。

日下部 これは、部屋の広さって関係ありますか?

小林 50平米以上が条件です。一番気をつけたいのが所有期間の条件なんですね。売却した年の1月1日時点で、5年以上所有している物件でないといけません。そういう家を売って、新たに住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、この特例が使えます。

日下部 売るだけじゃなくて、新しく家を買わないといけないんですね。

小林 今お話したのが買い換えた人向けの特例なんですが、買い換えなかった人向けの特例もありますよ。

日下部 わかりやすく説明していただいてもいいですか?

小林 もともとの自宅に住宅ローンが残っていたら、売却代金を住宅ローン残債にあてても、ローンが残る可能性がありますよね。こういうときは、自宅を買い替えていなくても、損益通算や繰越控除が使える可能性があります。

日下部 う~ん。買い替えた場合の特例と、買い換えない場合の特例は、どっちが有利なんですか?

小林 有利なのは買い換えた場合の特例です。買い換えなかった場合の特例は、自宅の売却損全額を損益通算できるわけじゃないんですね。ちょっと制限がかかってきてしまいます。

日下部 はい。とりあえず、買い替えたほうが有利とおぼえておけばいいですね。