「運気の悪いヤツとは付き合うな」

 このときに、思い出したことがあります。

 TBSに勤めていたころにお世話になった、あるタレントさんに言われた言葉です。

 その方は、いつも明るく、とても心の温かい方で、だからこそ、競争の激しいテレビの世界で長く活躍されているのだと、僕はとても尊敬をしていました。その方が、僕にこうおっしゃったのです。

「運気の悪いヤツとは付き合うな」

「運気の悪いヤツ」とは、どういう人なのか?

 ツイていない人? うまくいっていない人?

 そんなことを尋ねると、その方は「そういうことじゃない」とおっしゃいます。そして、その方のかつてのマネジャーの話を教えてくれました。

 その方は、何か必要なものがあると、マネジャーに財布を渡して、買ってきてもらっていましたが、あるとき、財布のお金の減り方がおかしいと気づいたそうです。そんなに使った覚えがないのに、お金が減っている。不思議だなと思ったので、一計を案じました。財布に入っているすべてのお札に、赤ペンで印をつけていったのです。

 そして、数日後、マネジャーにこう言ったそうです。

「悪いけど、手持ちがないから、お金を貸してくれないか?」

 そして、「わかりました」と言って、マネジャーが渡したお札をチェックすると、そこには赤ペンでつけた印があったというのです。非常に残念に思ったそうですが、その方は、厳しい判断をしました。

「君はクビだ。今すぐ、ここから出て行ってくれ。このお札についている赤い印は、僕がつけたものだ。意味、わかるよね?」

「テイカー」がすべてを壊す

「こういうヤツが、“運気が悪いヤツ”なんだ」

 その方は、そうおっしゃいます。そして、「そういうヤツと付き合ったら、自分の運気も悪くなる。そういうヤツのお金を自分の財布に入れたら、自分のお金が燃えるぞ」ともおっしゃいました。

 僕なりに解釈すると、要するに、“運気が悪いヤツ”とは、決して失敗をした人というわけではなく、人を騙したり、後ろ指をさされるような「悪いこと」をしている人です。「自分の利益のためだけに、人から奪おうとする人」、すなわち「テイカー(taker)」のことだと思うのです。

 そして、たしかに、「テイカー」と付き合えば、自分の運気も悪くなるのは当然のことだと思います。なぜなら、「自分の利益のためだけに、人から奪おうとする人」と付き合えば、僕は奪われる一方だからです。しかも、僕のまわりにいる人たちからも、「奪おう」とするでしょうから、僕と付き合ってくれている素晴らしい人たちも、そこからどんどん逃げていってしまうに違いありません。

 これは、恐ろしいことです。

 僕は、「僕という人間」を信頼してくださる方々の「母数」を増やし、そうした方々をおつなぎすることで「ご縁」を広げてきました。これは、いわば信頼によって結びついた「コミュニティ」を作り上げるようなものです。

 しかし、そこに「テイカー」が紛れ込むと、僕に対する不信感をもつ方が増えていき、最終的には「コミュニティ」そのものが崩壊していってしまうでしょう。そのとき、営業マンとしての仕事も崩壊するとともに、僕自身の人生も大きく傷つくことになってしまう。それは、本当に恐ろしいことだと思います。