10万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏と、発売直後に大重版がかかり話題を集めている『超★営業思考』の著者・金沢景敏氏が、「『圧倒的な結果』を生み出す思考法」をテーマに語り合う対談の第2回。TBS時代、数々のアスリートを取材していた金沢氏。世界の舞台で圧倒的なパフォーマンスを発揮する彼らにはある「共通点」があったという。ビジネスにも通じるその「共通点」とは?(構成:ライター 前田浩弥)

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「結果」を出す人は、明確な「ゴール」を設定する

安藤広大氏(以下、安藤) プルデンシャル生命の頂点を極めたトップ営業マンだった金沢さんが起業されて、「識学」でマネジメントを学んでくださっていますが、いかがですか?

金沢景敏氏(以下、金沢) プレイヤーとマネージャーの「根本的な違い」を学ばせていただいていて、正直、「耳の痛いこと」ばっかりですね。マネージャーとして自身の至らない部分が浮き彫りになって、苦しんでいます。

安藤 そうですか。でも、僕は、そこが金沢さんのエライところだと思うんです。金沢さんは普段から、「耳の痛いこと」を自分から積極的に取りにいっているような印象があります。

金沢 そう言われたら、そうかもしれないですけど……でも、「耳の痛いこと」を聞くのはものすごく嫌なんですよ。ほんとに辛いですから。でもぼくは、居心地のいい場所にいても成長しないと考えているので、「識学」で耳の痛い思いをしているのは、よい兆候だろ思っています。成長は「不快な場所」にしかないですからね。

安藤 素晴らしい。

金沢 本質的に「ひとりSM」なのかもしれないですね(笑)。追い込んで喜んでいる自分と、追い込まれて喜んでいる自分が同居している。それが「結果」に繋がると思えるからこそ、「ひとりSM」が成立するんだと思います。

 ちなみに、僕は、1日1食しか食べないんです。絶対に夕飯しか食べない。これ、日中はやっぱりお腹空くんです。でも夜になったらおいしいものを食べられるんだと思ったら、我慢できる。「その数時間くらい我慢できない自分は何なんだ」と自分を叱咤激励しながら我慢するんです。

安藤 すごいね、追い込み方が(笑)。

安藤広大(あんどう・こうだい
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2020年10月現在、約1900社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。

金沢 だけど、その分、僕は夕飯の一口目を、誰よりもおいしく食べられる(笑)。我慢した分、喜びが大きくなるんです。日中、お腹が空いても「夜になったらおいしいものをたくさん食べられる」と思えば頑張れる。

安藤 なるほど。

金沢 ただし、追い込むにはルールがあって、必ず「ゴール」を明確にすること。何時に夕飯が食べられるかがわからなかったら、我慢できませんからね。

 仕事も同じです。僕が営業マンをやっていた頃は、年間目標という最終的なゴールを設定するだけではなく、「小さな締め切り」「小さなご褒美」「小さなゴール」をたくさんつくっていました。

 例えば、お客様が会ってくださるのは、みなさんが起きている時間だけですから、夜9時ごろまではお客様との面会に使って、夜中2~3時くらいまで事務処理や提案書の作成をしていました。

 そのように、平日は睡眠を削って頑張っていたわけですが、土日のどちらかは必ずたっぷり寝るようにしていました。そんな「小さなご褒美」を用意しているから、なんとかハードワークにも前向きに取り組むことができたんです。

 ゴールが見えないと人間は頑張れないんです。だから今後、マネージャーとして組織をつくっていくうえでも、メンバーがそれぞれ「小さなご褒美」「小さなゴール」を意識できるようにしていくことが大事だと思っています。

安藤 それは、すごく大事なことですね。人間が最も精神的ダメージを受けるのは「迷っているとき」なんです。だからマネジメントをするうえで大切なのは、「メンバーが迷わないようにする」ことです。

 能力が高い人間は、ゴールが遠くても迷わない。でも「今やるべきこと」が明確になっていない人間は、ゴールを遠くに設定すると、迷うんです。人間がメンタルを病むのは「強い負荷がかかっているから」ではありません。「ゴールが見えないから」なんです。だから、ゴールを近くに設定することは、マネージャーの非常に重要な仕事です。

金沢 わかります。プルデンシャル時代のハードな生活を振り返るに、あの生活をぼくが「誰かにやらされていた」のだとしたら、確実に鬱になっていたと思います。「いつになったらこの生活から抜け出せるんだ」と考えるでしょうからね。でもぼくは、自分の意思であの生き方を決めたから、ゴールも自分で設定でき、メンタルが折れることもなかった。

安藤 一般に、「恐怖」が強いと鬱になると思われがちなんですけど、それは違って、実は「ゴールが認識できているかどうか」なんです。「ゴール」がわかっていれば、人は頑張り抜くことができる。だから、鬱の解消方法は「恐怖を取り除く」のではなく、「ゴールを明確にしてあげる」のが正しいのです。マネージャーが意識すべきなのは、励ますとかそういうことではなく、ちゃんとゴールを明示してあげることなんです。

金沢 確かに、僕は起業してから「恐怖」だらけだけど、メンタルは元気ですね。人生は不確実だから「恐怖」を取り除くことはできない。むしろ「恐怖がある」と認められているからこそ、恐怖に対して向き合って、それを克服するために具体的な行動を起こすことができる。そして、具体的な行動を起こしていれば、恐怖を乗り越えることはできると実感しています。