退職金は社内預金の満期と考えるべし

「住宅ローンの返済を急がずに余裕資金を投資する」と聞くと、「多額に借金を抱えているのに金融資産のほとんどを株と外貨に投資するなんて、危険すぎる」と考える読者が多いであろう。しかし、落ち着いて考えてみよう。

 読者がサラリーマンであれば、多額の退職金が受け取れるはずだ。それを「社内預金が退職日に満期になるのだ」と考えてみよう。退職金は永年勤続の褒美などではなく、「自分の給料は本当はもっと高いのに、その一部を会社が勝手に天引きして社内預金をしていた」と考えるのである。

 読者は、銀行預金は少ないかもしれないが、勤務先に預けてある社内預金を併せて考えれば、多額の金融資産を持っているわけで、その割にインフレに強い資産が少ない(金融資産が預金に偏っている)と感じられるであろう。

 余談だが、退職金を社内預金の満期だと考えるメリットは他にもある。多額のご褒美だと考えるとついぜいたくをしたくなるが、それを思いとどまることができるのだ。その点については拙稿『退職金を「ご褒美」だと考えると、老後資産を散在してしまう理由』(https://diamond.jp/articles/-/269094)を併せてご参照いただければ幸いである。

 なお、読者が自営業者であれば、退職金が期待できないので、早めに借金を返すほうが精神衛生上良かろうが、それでも時間分散という観点から言えば、長い時間をかけて少しずつ株や外貨を買っていくほうがリスクは小さいので、少額でも良いから若い時から積立投資をするように心がけると良かろう。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、当然であるが、投資は自己責任でお願いしたい。