一部の資本家に寄生して、おこぼれで給料をもらっている。まさに「ブルシット」じゃないか。そう感じて、コンサルタントファームを辞めて、自ら起業したり、ボランティアをしたりする人がけっこういるというのです。

的場:いまの社会では本来価値のある労働がブルシット・ジョブ扱いになっていますよね。なくてもいい価値のない労働が、高給でちゃんとした仕事のように捉えられている。

『資本論』の中では、流通産業の話が出てきます。コンサルタントや広告業がそうですが、流通産業(媒介産業)にはそれ自体あまり価値はないのに、いまは圧倒的に大きな収益をあげています。作ったものにお化粧をして宣伝して、いかにも価値があるように見せる。実際のところ価値があるかどうかはどうでもよく、「価値があるように見せる」ことが大切な仕事です。資本主義の中では、そのような仕事が重要なものとして扱われています。

池上:いまの若い世代の方々には、仕事ってなんだろう?働く意味ってなんだろう?高い給料をもらえればどんな仕事でもいいのか?そういうことをしっかりと考え、自分なりの働き方を見つけてほしいですね。

こんな時代にビジネスパーソンが『資本論』を読む意義とは

的場:本来私たちの社会は一般の人々が働く労働が価値を生むことによって成り立っています。働いた人が働いた分だけお金をもらい(ここに資本主義社会の困難があります)、社会を形成していれば、再生産はうまくいきます。ところが、誰かが富を独り占めすると再生産はうまくいかない。働いても満足な給料がもらえないというのは、労働の配分の仕方やシステムになんらかの問題があるということです。

 現在、拡大している格差はまさにここに問題があります。こうした資本主義のシステムや問題点を学ぶうえで、マルクスの『資本論』ほど役立つものはありません。ただ、内容を理解するのがむずかしいというのが難点なんですが……。

池上:今回のコロナ禍では、エッセンシャルワーカーの存在が注目されるようになりました。医療や福祉を支える人、物流や小売業、ライフラインで働く人々……まさにこういう人たちの存在によって、私たちの社会は成り立っているということを再認識したのが今回のコロナ騒動ですね。