改修のコンセプトは、「集い・気付き・学ぶ」だった

 セブン&アイグループのさまざまな企業の従業員が利用する伊藤研修センター――研修で訪れた人が面識のない人と施設内で出会うことも多く、それによって生まれる「気付き」も多いという。

高木 ここの開設前は、グループ企業の従業員が一堂に会するような大型の研修施設がなかったので、「いろいろなグループ(企業)社員を間近で見られて刺激を受けた」といった声も多いですね。グループA社の従業員同士が廊下で丁寧に挨拶している姿を見て、グループB社の方が「さすが、A社の人たちだよね」といったふうに。グループ企業の従業員が自社の研修を受けていても、別会社の研修の様子やオープンスペースでの立ち居振る舞いから何かを感じ取ることもあります。各社の管理職が集まるようなグループ横断の研修では、初めてリアルに対面し、名刺交換する出会いもあります。人それぞれが持つ空気感に触れることはオンラインの研修ではなかなかあり得ないですよね。食堂で食事する○○さん、ラウンジでくつろぐ□□さん――来館された方は、館内のあらゆる場所で人への気付きがあるようです。

ウィズコロナで価値を高める新横浜の“大型研修施設”――その魅力を探る【技能室】
食品を扱う業態を多数展開するセブン&アイグループならではの技能室。鮮魚・精肉・青果の取り扱いをはじめ、惣菜、寿司などの調理や加工技術のトレーニングを存分に行うことができる(全6室)。収容人数は、各室とも20名ほどで、コロナ禍で状況が変わってはいるものの、毎年上半期は新入社員の研修使用で連日満室状態だという。入社後は店舗の各部門に配属されるので、鮮魚売り場に配属されれば鮮魚技能室に、精肉売り場に配属されれば精肉技能室に通い、必要な技能を習得していく。「大学を出て、包丁を生まれて初めて握る若者もいます。そうした新入社員も研修後には魚をしっかりおろせるようになります」(高木センター長談)。商品の模型を利用して売り場づくりの基本を学ぶ「陳列実習室」もある
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 史料室の展示更新、ライブラリーラウンジや新しい形の研修室への改装、感染対策など、昨年2020年に、伊藤研修センターは一部の改修工事を行った。

高木 工事期間は1カ月ほどで、館内の営業を続けながら行いました。開設しておよそ10年を迎え、史料室の展示拡充の必要性、設備や機器の老朽化もあって、「新しい形の研修センターにしたい」という話が出ていました。時代のニーズにいっそう合った研修施設にしたい、と。そこにコロナ禍が重なり、「だったら、感染対策も一緒にやってしまおう」となったのです。

 改修のコンセプトは、「集い・気付き・学ぶ」――まず集う、次に、お互いに気付き合う。いろいろな個性があって、いろいろな考えがあることを知り、その学びを各職場に持って帰り、研鑽するというコンセプトです。「集い」がオンラインのみになってしまうのは残念です。先ほど言いましたように、その人の空気感やお互いの熱量を肌で感じ取ることに「集合」の価値があります。オンラインでの研修は、4時間が限界とも言われ、パソコンを前にしての4時間以上の集中はきつい…ところが、リアル空間での集合研修なら、同じ場所に丸一日いてもカリキュラムの工夫次第では苦になりません。たとえば、ディズニーランドは、オンラインではお客様は満足しないでしょう。実際にその場に行かないとあの独特の空気は感じられません。教会や寺社仏閣もそう。リアルな空間で凛とした空気を吸い、心が落ち着くわけで…研修センターもそうありたいなと思っています。もちろん、オンラインにはオンラインの良さがあります。その良さを生かしながらオンラインでの研修も増えていくはずですが、この場所に来てできる、伊藤研修センターならではの「学び」を私たちは重視していきたいと思います。

ウィズコロナで価値を高める新横浜の“大型研修施設”――その魅力を探る正面入り口右手(1階)にある「プレゼンテーションルーム」はガラスを隔てた陽光とともに良い学びのできる空間になっている。収容人数は40名(標準使用時)
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ウィズコロナで価値を高める新横浜の“大型研修施設”――その魅力を探る自然光も差し込む、居心地の良いレストラン・ラウンジ。コロナ禍での制限はあるものの、健康に配慮して提供される食事を研修中の仲間とともに楽しめる。収容人数は198名
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