新型コロナウイルスとの共生が始まって1年以上が経過した。新しい生活様式にも慣れてきたように思うが、日々変わる情勢や、いつ収束するのか分からない不安から、知らず知らずのうちに疲弊している人は多い。そのうえ、これから季節の変わり目という気候変動の激しい時期を迎えると、たまりにたまったコップの水があふれてしまう人も増加していくだろう。

「気象病の発症は気圧の影響が大きいですが、温度差や寒暖差も大きく関係してきます。これから冬が近づくにつれ、体が冷える、温かくなるという状態を繰り返すと、疲労が蓄積し、自律神経が乱れてあらゆる不調が出てきてしまう人は増えるでしょう」

気圧予報を確認し
健康記録を管理

 人によっては、仕事ができないほどの体調不良を起こしてしまう気象病。そもそもの持病を緩和していくことが、悪化を抑える一番の近道だという。

「コップの水が満杯にならないよう、根本的な問題を治す生活を心がけることが最重要です。しかし、最近は気象病に効果的な漢方や市販薬も登場してきています。不調の種類や個々人の体質にもよりますが、合う薬が見つかったら力を借りてみるのもいいと思いますよ」

 しかし、働き盛りのビジネスマンは、薬が服用できる状況に常に身を置けるわけでもない。薬を用いずとも症状を緩和できる方法はないのだろうか。

「耳のマッサージがおすすめです。日頃から取り入れれば、気象病の予防にもなります。やり方は簡単で、耳たぶを持ち、下、上、真横に引っ張るだけ。引っ張りながら前後に回したり、耳全体を押したりするのも効果的です。どれも10~20秒くらいの短時間、かつ軽い力でOK。気付いたときにマッサージをすれば、頭痛やめまいをはじめとする気象病の症状の軽減が期待できます」

 そのほかに久手堅氏が勧める予防法が、気圧予報のチェックと健康記録の管理だ。最近はこの両方が簡単に行えるスマホアプリもリリースされている。不調を感じた瞬間に記録し、どういった気象の変化が影響をもたらしているのか、アプリ上でデータが残せるわけだ。

 記録があれば不調に陥りやすい気候条件が分かるようになり、「あさっては気圧が下がって体調が優れなくなる恐れがあるから、人と会う予定は避けよう」など、仕事の予定が調整しやすくなる。

 気象病は、人によってはまったく症状を感じない病気だ。それゆえ「雨くらいで仕事に支障をきたすなんて…」と、理解がない人も少なくない。天気と関係している体調の変化を記録しておけば、職場の人間に気象病の悩みを打ち明けやすくもなるだろう。

 もし、自分は気象病と無関係だと思っても、職場に悩んでいる人がいないか注意してみてほしい。気象病はまだまだ社会的認知度が低い病気だからこそ、当事者は言い出しづらいもの。誰かが気にかけ、フォローができれば、今よりも働きやすい環境を作っていけるかもしれない。そうすればきっと、職場全体にプラスの作用をもたらすはずだ。