「気象病の症状は頭痛が代表的ですが、ほかにも、めまい、全身倦怠感、首や肩のこり、気分の落ち込み、不安、うつ、古傷の痛み、関節痛、目のかゆみや鼻水、気管支ぜんそくなどのアレルギー症状など、さまざまな悩みが現れます。女性では手足のむくみや、低血圧で朝布団から起き上がれない、といった症状も出やすいです」(久手堅氏、以下同)

 気象変化が心身に影響を与えるのはなぜか。

 久手堅氏は「自律神経の切り替えがうまくいかないことが原因」と話す。

「気圧が下がると耳の奥にある『内耳』という器官が変動を感知し、気圧の低下を内耳から脳へ、脳から自律神経へと伝えます。自律神経は、緊張モードの『交感神経』、リラックスモードの『副交感神経』があり、相互に自動的にバランスを取っているのですが、気圧の変化を察知すると自律神経のバランスが崩れてしまうのです。そして、気分の落ち込みや不安、血管の拡張によって起きる片頭痛、自律神経の経路である首や肩の痛みなど、さまざまな症状を引き起こします」

 気象病の症状は、持病(もしくは日頃から不調を感じている部分)が気候の変化でより強く現れるという傾向が強い。つまり、慢性的に不調を抱えていないか、不調の具合が弱ければ、そこまで気候変動による影響を受けないという。ただし、気圧の変化が大きければ、何もない人でも気象病の症状が出現することもあるそうだ。

「水が入ったコップをイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。元々の痛みの具合が弱く、痛みがコップの半分までしかたまっていなければ、『気圧の低下』という水滴が一滴入ったところで大きな影響はありません。しかし、持病の痛みがコップのフチぎりぎりまでたまってしまっていると、少しの衝撃でコップの水はあふれてしまいます。気象病は、日頃から抱えている心身の不調が大きいほど、ダメージを受けやすいのです」

気象病を訴える患者が
コロナ禍で急増

 特にデスクワークが中心のビジネスパーソンは、気象病を発症しやすい人が多いという。

「長時間同じ姿勢で作業をしているデスクワーカーは、首や肩のこりに悩まされている人も多いでしょう。雨の日には首や肩のこりが誘発されます。また、変な座り方をしていれば骨格がゆがみ、内耳の位置も乱れ、それに伴って自律神経も乱れやすくなるので、余計に悪化するでしょう。さらにパソコンやスマホの使いすぎは交感神経を刺激する上、頭痛や眼精疲労の原因にもなるので使用時間にも注意が必要です」

 これまで気象病というと、デスクワーカーや自律神経が乱れやすい女性に多い病気だった。だが、ここ1~2年で、これまで気象病と無縁だった人も雨の日の不調を感じるようになってきている。大きな原因として考えられるのが、リモートワークだ。

「自宅のデスクはオフィスと比べて環境が整っていないことが多いですし、慣れない業務スタイルで心理的な負荷も大きい。今まで以上に運動不足になっている人も多いでしょう。オンオフの切り替えもうまくつかず、自律神経も乱れがちになっています。コロナ禍で心身の不調を抱え、コップの水が満杯になってこぼれてしまった(心身への負担が許容量を超えてしまった)人が増えたために、気象病を訴える人も増えたというわけです」