適応障害がうつ病とは異なっている特徴は、むしろ症状の原因にあります。ポイントは「適応障害は明らかなストレスが原因で発症する病気だ」ということです。症状は似ていても、ストレスとは関係なく発症することがあるうつ病とは違い、適応障害は特定のストレスがきっかけで発症します。

 そして、適応障害のもうひとつの特徴は、発症の原因となったストレスが取り除かれると、多くの場合症状が収まることです。例えば、「会社の業務になじめず発症→部署を異動したら改善」といったことがよくありますし、「職場ではうつ状態なのに、プライベートではウソのように元気に遊び回っている」人も中にはいます。

 といっても、現実にはすぐに取り除けないストレスも少なくないため、油断はできません。また、ストレスが取り除けず、症状が慢性化するようだと、うつ病と診断されることもあります。

 適応障害の経過は全般に良好です。多くの患者は3カ月以内に以前の状態に回復が可能です。ただ一部の人は、その後うつ病などの疾患を発症することがあります。またストレス因が長引く場合は、症状が持続することも見られます。

「適応障害=軽いうつ」と考えてよいのか

 適応障害は「軽いうつ」と理解していただいて、大きな間違いはありません。医学的に正確な表現をするなら「なんらかのストレスがきっかけで生じる軽度のうつ状態。うつ病にくらべて比較的早期(通常6カ月)のうちに回復する」ものが適応障害だと言ってよいでしょう。

 そのため、病院にかかるまでもなく、日常生活を送っているうちに元気になる人もたくさんいます。前出の「ICD-10」は、適応障害の症状面での特徴を、次のようにまとめています。

1.現症としては主観的な苦痛、情緒障害の状態であり、通常の社会的機能と行為を妨げられる
2.過激な行動や突発的な暴力へと走りたくなる感情に襲われるが、それが実行されることはほとんどない
3.これらの症状は他のより特異的な疾病診断を十分に正当化するほど重篤でも、また顕著でもない