これほど心を軽くしてくれる処方箋が、いまだかつてあったでしょうか。精神科医のバク先生が上梓した『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』には、生きづらさを解消してくれるヒントが詰め込まれています。自身も発達障害やうつなどに苦しんできたというバク先生は、世の中に溶け込み擬態する方法を学べば、悩みの多くは「悩まなくてよかった」と思えるようになると語ります。今回は本書の発売を記念し、適応障害になりやすい人、ストレスで心が折れてしまいやすい人に共通する特徴と、その対処法について聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、イラスト/ナカニシヒカル、撮影/石郷友仁)
ストレス原因に過剰反応してしまう「適応障害」とは
──最近ではコロナ禍の影響もあってか、ストレスが溜まって調子を崩してしまう、という人も増えてきました。「適応障害」で仕事に行けなくなった、という話もよく耳にします。「適応障害」とはそもそも、どんな病気なのでしょうか。
バク先生(以下、バク):いろいろな要素があるのですが、いちばん特徴的なのは「ストレスの原因がはっきりしている」ことですね。たとえばブラック企業で激務が続いている、上司から暴言を吐かれる、学校でいじめられている……。そのせいで日常生活に支障が出るほど落ち込んでいる、というのが適応障害です。ストレス原因がはじまってから3ヵ月以内にメンタルや行動がおかしくなれば、適応障害と診断される可能性が高いですね。
──仕事で嫌なことがあって落ち込む……というのは誰でも経験することなのかなと思うのですが、そういった日常的なメンタルの低下とは何が違うのでしょうか?
バク:「ストレスの原因に対して、反応が大きすぎる」ことも適応障害の定義のひとつです。誰だってストレスがあればお腹が痛くなったり、嫌いな上司に怒られたら「はあ、怒られた、嫌な気分だなあ」と落ち込んだりしますよね。
でも、たとえばちょっとした注意をされた瞬間に大号泣してしまって、涙がずっと止まらないとか、過剰な反応をしている場合は、適応障害の可能性が高いです。
なかには、タンスの角に小指をぶつけたことがきっかけで適応障害に気付く人もいますよ。
──えっ!? 角に小指をぶつけただけで!? どういうことですか?
バク:要するに、本人が気がついていないうちにストレスが限界まで溜まっていたんですよね。心の中にストレスが溜まるコップみたいなものがあるとしたら、表面張力でギリギリ保っているような、もういつ溢れるかわからない状態が続いていた。それが、小指をぶつけて痛みを感じたというストレスによって「痛っ! こんなにがんばってるのに、なんで小指ぶつけなきゃいけないの……」「何やってももうダメだ……」みたいに一気に溢れてしまい、発症した。こういうこと、実はよくあるんですよ。