JR西日本が目指す
自動運転・隊列走行BRT

 では、JR西日本が目指す「自動運転・隊列走行BRT」とは何なのか、通常のBRTとは何が違うのだろうか。

 今さら言うまでもないが、自動運転とはこれまで運転手が担ってきた安全確認や予測、判断、操作をシステムで代替する技術である。

 それに比べると隊列走行は耳慣れない言葉かもしれないが、要は親アヒルと後をついていく子アヒルの行進のようなものだ。とはいえ、全ての車に運転手が乗って隊列を組んでは意味がない。先頭車両にのみ運転手が乗務して、後続車は自動運転で走行することで、ドライバー不足や高齢化などを解決しようという取り組みだ。

 既にトラックでは実証実験が進められており、国土交通省は今年2月22日に、新東名高速道路で先頭車両1台と後続車両2台による試験走行(時速80キロで車間距離約9メートル)に成功したと発表している。

 JR西日本の実験車両はステレオカメラや光センサー、ミリ波センサー、GNSSアンテナなどを備えており、これは基本的にはトラックで使われている技術と同じものだという。隊列の車間は、走行時は10~20メートル、停車時は1~3メートルを想定する。小型バス、大型バス、連接バスを組み合わせて試験し、最大4台の隊列走行が可能だ。連接バスを4台並べると約80メートル。鉄道の4両編成に匹敵する輸送力だ。

 不破担当課長は「閉鎖空間、限定空間である専用道は自動運転の実現性が高い上、速達性、定時性の確保もできます。ここに隊列走行を加えることで、輸送ニーズに応じてピーク時間帯は複数台で隊列走行したり、支線区から合流して隊列に加わったり、日中閑散時間帯は1台で運行したりと、適切なリソースで適切な輸送力を提供できます」と説明する。

 しかし、専用道を走るのであれば先頭車両も含めて無人の自動運転化はできないのだろうか。実際、JR東日本は2017年から気仙沼線・大船渡線BRTで将来的な自動運転レベル4を目指した実証実験に着手している。ドライバー不足や運行コスト削減を目指すのであれば、そこまで射程に入れた検討をしてもいいのではないか。

 これに対して不破担当課長は「無人で時速60キロで走るという世界観は、まだ早いと考えています」とした上で、「自動運転レベル3では、何かあった時に対応する人がいなければならないのでコストメリットがありません。ではレベル4が来るかといえば、大分先のことです。専用道とはいえすぐに実現できるかというと、なかなか厳しい。一番実現しやすく、早く実装できるものを優先したいと思っています」と語る。