2020年代半ばの
社会実装が目標

 インタビューで不破担当課長が何度も強調したのは、「早期の社会実装」というフレーズだ。

「この手の自動運転の実証実験は結構やっていますが、実装に向かっているのではなく実証実験のための実証実験をやっている印象があります。どんな環境だったら使えるのか、コストや長期的な耐久性、保守するための部品のサプライチェーンの確保など、事業に供するという観点での課題は大きいと考えています」

 そして、それを検証するために用意したのが総面積2.28ヘクタール、総延長約1.1キロの専用テストコースだ。

建設中の専用テストコース建設中の専用テストコース(写真提供:JR西日本)

 既に10月から基本的な車両の機能試験に着手しており、来年春ごろには隊列走行の試験を開始する計画だ。そして2023年に専用テストコースにおける自動運転・隊列走行技術を確立し、2020年代半ばに社会実装を目指すという。

「自動運転・隊列走行BRTを作りたいのではなく、持続可能な交通システムを街に実装することが目的です。それが目指す姿としてあって、そのためには単に技術的なことだけでなく、世の中から受け入れられるものでなければなりません」

「普通、自動車メーカーのテストコースは山奥の見えないところに作ります。今回はたまたま余っていた土地が(滋賀県野洲市の車両基地内に)あったというのもありますが、テストコースで自動運転の車が走っているところを新快速の窓から見てもらうことが、早期の実装につながると思っています」

 それでは、自動運転・隊列走行BRTはどのような路線に導入していくのだろうか。

 不破担当課長は「早期の社会実装を目指す」としながら、一方で「(現時点では具体的な)実装先はない」と言う。一見、矛盾しているように思えるが、特定の路線にフィットする技術を開発しているのではなく、BRTの特性が生かせる場所であれば、どのような環境でも実装可能なインフラを構築しようというのが、その真意だ。何より、さまざまな輸送量・ニーズに対応しようという隊列走行がその証左である。