「輸送のボリュームで考えると、京阪神のアーバンネットワークなど、高速で大量の輸送が求められている路線を置き換えることはできません。都市部というより地方になりますが、輸送量が少なすぎる路線では、専用道というインフラを作ってまで輸送モードを変える必要性がありません。地方中核都市の輸送を担っているような路線が想定できます」

「その他、専用道を用意しやすいという観点でいえば工場だったり、空港だったり、商業施設だったり、閉じた空間で走らせる環境も想定されます。名古屋ではガイドウェイバスがありますが、都市計画の中で都市部においても専用道が用意できる場合は、都市の中にも取り込める可能性はゼロではないと思っています」

 BRTに対する熱い思いを語ってくれた不破担当課長。実は2003年にJR西日本に入社し車両部門で勤務していたが、自動運転技術により自動車が社会インフラになると確信し、2018年に自動車部品メーカーに転職した。ところが2020年、BRTのプロジェクトが動き出す中で「やってみるか?」と声がかかり、再びJR西日本に入社したという異色の経歴の持ち主だ。

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 これまで鉄道は鉄道、バスはバスと分かれていた人々の動線を、面でつながるようにしたいと不破担当課長は言う。隊列に加わるのはバスだけとは限らない。貨物トラックや病院の送迎バスなど、地域のニーズに応じてさまざまな車両がくっついては離れるような可能性もある。

「(自動運転・隊列走行を)個別の事業者がそれぞれ開発するのは難しい。開発にはお金がかかりますが、自分たちだけが使ってもメリットは自分たちしかありません。多くの方に使ってもらえるよう、オープンに捉えています」

 いつの日か、バスが列をなして走る姿が日本各地で見られるようになるかもしれない。