しかし、これらの便利なツールで情報を集めたり、整理したりすることはできても、それをどのように生かし、ビジネスにつなげるかを考えることはまだAIにはできません。

 この国の人にはこういうアプローチがいいのではないか、これからはこういうものが受け入れられるのではないか。地域性や人間性の特徴を分析し、新たな価値のあるものを予測し、生み出すのは人間にしかできないのです。これからの社会では、このような「人間にしかできない能力」が求められるようになります。

 そして、それを育む場所は学校以外にはあり得ません。このように、教育は社会の変化とともに変わっていくべきものなのです。

なぜ「思考力」「判断力」「表現力」が求められるのか

「人間にしかできない能力」として挙げられるのが、「思考力」「判断力」「表現力」です。思考力を簡単に言えば、「あれこれ考える力」です。考えるというと、ウンウン頭をひねっている状態をイメージする人が多いかもしれません。テストの問題を考えて正解を出すのも考えることの一つですが、ここで伝えたい「考える」はそれとは少し異なります。

 私たちは生きていくうえで、さまざまな事態や出来事に直面します。たとえば、今なら新型コロナウイルスの感染拡大が大きな問題になっています。こうした未知の出来事にははっきりした「正解」がありません。このような状況では、よりよい方法や解決法を見つけるのに思考力が必要になります。

「考える」には、まず対象となる「課題」があり、「分析」→「解釈」→「検証」の3つのステップを踏んで、その課題を解決していきます。物事を考えるには、その元となる知識や情報が必要です。従来の教育では、この知識を増やすことに重点が置かれていました。

 しかし今は、これらの知識や情報はインターネットで簡単に手に入るため、知識を増やすために努力する必要はなくなりました。誤解をしないでいただきたいのは、知識が不要というわけではありません。知識がなければ、考えることはできませんし、知識が多ければ多いほど、場合を尽くして最善の方法を考えることができます。