AO・推薦入試の志望者が増加した大きな要因は、2021年度の入試から開始される共通テストへの不安だ。柱だった英語の民間試験採用と記述式の導入が見送られ、入試改革はどうなるのか。特集『AO・推薦入試必勝法&21年入試研究』#7では、迷走する入試改革の行く末を探る。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
見送られた英語民間試験採用と記述式
迷走する入試改革の行く末
「自分の身の丈に合わせて勝負して頑張ってもらえれば」と、昨年10月28日、萩生田光一・文部科学大臣は、来年から実施される予定だった大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の英語4技能評価で採用される民間試験について語った。この一言が大学入試改革の迷走の始まりだった。
改革の目玉として、1990年から続いた大学入試センター試験(以下、センター試験)は今年で終了し、来年からは共通テストが始まる予定だった。
その共通テストの二つの柱が英語4技能評価における民間試験採用と、国語と数学における記述式の問題の導入だった。二つの柱以外では、出題形式などに変更はあるものの(特集#8『センター試験の後継「共通テスト」8つの特徴!英語の配点、会話形式…』参照)、教科数、科目数などの枠組みは変わらない。
従来のセンター試験の英語は「読む、聞く」能力を測るテスト。共通テストでも、センター試験同様、読む、聞く能力を測る英語のテストは実施されるが、それに加えて、「書く、話す」能力を測るために、4技能を測定する民間試験の採用が決定されていたのだ。
民間試験を、高校3年生の4月から12月の間に2回受験し、その成績が大学入試センターに送られる。3回以上受験することができるが、最初の2回分しか成績として採用されない。これが、民間試験の実施要項だった。
共通テストに採用予定だった英語の民間試験は、英検、TOEFL、GTEC、ILETSなど複数ある。それぞれ実施回数、受験料、会場数などが大きく違う。実施回数は2~3回から二十数回、受験料は5、6千円から2万5000円前後、会場数も40前後から400程度といった具合にばらつきが大きい。
大都市圏の受験生は、採用された民間試験を居住地域の近くで受けることができるが、地方の受験生は試験によっては少なからぬ距離の移動を強いられる。
実施回数が少ない試験の場合、学校行事や部活動の都合で受験できないこともあり得る。また、受験料が高ければ経済的な理由で受けることを断念するケースも出てくるだろう。
そうした地域格差、経済格差に対して、萩生田大臣は「身の丈に合わせて」と発言したのだが、格差を是認するのかとの批判が相次いだ。改めて格差が問題視されたことで、結局11月1日に英語4技能評価のための民間試験採用が見送られることになった。