この10年で急速に成長。パッケージソフトのサブスク化に成功し、株価は21倍に

 アドビの2020年度(11月下旬締め)を見ると、通年の売上高は128億7000万ドル(約1兆4671億8000万円、以下すべて1ドル=114円換算)で、前年同期比15%増という2けた成長を続けている。2011年11月初旬に30ドル弱だった株価は、10月27日の終値の時点で640ドル8セントと、この10年で実に21倍になっており、時価総額は3057億2000万ドル(約34兆8520億8000万円)と、今やグローバルの時価総額のランキングでトップ30に入る巨大企業となった(2021年9月末現在)。

アドビの会計年度2020年度の第4四半期および通年の決算ハイライト(出典:Adobe 2020 Financial Analyst Meeting、Adobe)アドビの会計年度2020年度の第4四半期および通年の決算ハイライト(出典:Adobe 2020 Financial Analyst Meeting、Adobe)

 株式市場でアドビへの期待が高まっている最大の要因は、アドビの主力製品である「Creative Cloud」がカバーするクリエイターツール市場が拡大しているからだ。会計年度2020年度でのCreative Cloud部門(Digital Media segment)の通年売り上げは92億3000万ドルで、これはアドビ全体の売り上げ(128億7000万ドル)の71%を占めており、前年同期から20%の成長率を見せている。アドビほどの巨大なソフトウエア企業で年20%というのは、驚異的な成長率と言っていい。

パンデミックが追い風となり、Creative CloudがクリエイターのDXを進めた

 そうしたアドビにとって、昨年の春から始まった新型コロナウイルスのパンデミックは、逆風どころか追い風になったことが、同社が公開している決算書類から見てとれる。Creative Cloud部門(Digital Media segment)の売り上げを見ると、同社の会見年度2021年の第1四半期(12月~2月期)は前年同期比32%増、第2四半期(3月~5月期)は同25%増、第3四半期は同23%増となっており、いずれも大きく成長している。これはつまり、パンデミックが発生したことにより、Creative Cloudの契約ユーザー数が増えていることを意味する。

 アドビ デジタルメディア・プロダクト・マーケティング担当 上席副社長 アシュリー・スティル氏によれば、「パンデミックが始まって以来、われわれの製品を使っていただいているクリエイターも含めてリモートワークを強いられる状況になった。しかし、クリエイターは、Creative Cloudによりコンテンツ作成プロセスはデジタルに移行しており、従来の対面で行っていた顧客との面談などを、ZoomやTeamsに置き換えるだけでリモートワークに適応することができた」と話す。