「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha氏。
「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓した。
本書では、「挫折した話こそ教科書になる」「本は自分と意見の違う人間がいる意味を教えてくれる」など、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個の「本の効用」と共に紹介する。
「挫折した話」こそ、教科書になる
人が挫折する話を読むのが好きだ。
ニュースや映画などでは、勝った人間の話ばかりが取り上げられる。
だけど、その1人の勝者の裏には、負けて悔しい思いをしている人がたくさんいるはずだ。
僕は、そちらのほうに興味が湧く。
努力をしていた人間が勝つのは、ベタすぎてあまり深みがない。
「努力をしてきたにもかかわらず、勝てなかった」。これが人生だと思う。
生きるというのは大体、挫折をすることだ。
勝ちよりも負けのほうにこそ、人間の複雑で深い感情が表れるものだし、勝つことよりも負けることのほうが、人間を成長させる。
ずっと勝ってばかりで挫折を経験していない人間とは、あまり仲良くなりたくないなと思う。
表舞台には出てこない話
僕は将棋観戦が趣味で、ヒマなときはプロ棋士の将棋の対局をよく見ている。
棋士について書かれた本は、だいたい面白い。
それは、シビアな勝負の世界の話が描かれているからだ。
そして、藤井聡太のような圧倒的にすごい才能の持ち主の話も、もちろん面白いけれど、そうした天才たちになれなかった敗者たちの話に、僕は心が惹かれる。
大崎善生の『将棋の子』は、プロ棋士になれなかった者たちを描いたノンフィクション書だ。
将棋の世界では、地元で天才や神童と呼ばれた子どもたちが、全国から奨励会という組織に集められて競い合う。そして、そこで勝ち残った一握りだけがプロ棋士になれる。
奨励会に入るような子どもは全員ものすごく頭がいい子ばかりだ。
しかし、みんな子どもの頃から将棋だけに打ち込んできたので、将棋以外の社会経験をほとんど持たずに育つ。
そんな人たちが20代後半になって突然、「職歴のない無職」として社会に放り出されるのだ。『将棋の子』はそんな彼らのその後の人生に焦点を当てる。
僕らは普段、華々しく活躍しているプロ棋士しか目にすることがない。
「プロを目指していたけどなれなかった人たち」は、表舞台には出てこない。
彼らは、一体、その後どのような人生を歩んでいるのだろうか。