「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha氏。
「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓した。
本書では、「挫折した話こそ教科書になる」「本は自分と意見の違う人間がいる意味を教えてくれる」など、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個の「本の効用」と共に紹介する。
「進化」が速すぎる?
人間は「不健康」になるように進化してしまった(前回の記事『「人間は不健康になるように進化した?」その残酷な真実とは』より)。
人類の文明の進歩は、人体の進化が追いつかないほどにあまりにも速すぎた。
人類が類人猿から分岐したのが600万年前。ホモ・サピエンスが現れたのが20万年前。そして、狩猟採集生活から農耕生活への移行が起こったのが1万年前。
1万年前というと人間の尺度では遥か昔のようだけど、生物が進化するには短すぎるスパンだ。だから僕らの体は、何百万年間の狩猟採集生活の痕跡に適応したままなのだ。
農耕は「悪」なのか?
さらに、ここ何百年かの文明の進歩は異常なスピードだった。
産業革命が起こって、大多数の人類が農業以外の仕事につくようになったのは、たった250年前。パソコンでデスクワークをする人間が増えたのなんてごく最近のことだ。
人間の体はそんな生活を送るようにできていないのだ。
人類の歴史に関する本を読んでいると、「農耕は悪」という話がよく出てくる。
たとえば、ユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス全史』という本で、「農業革命は史上最大の詐欺」と言っている。
どういうことかというと、狩猟採集生活から農耕生活に変わったことで、人口は増えたけれど、人間の幸福度は下がってしまったのだ。
狩猟採集民は、1日に数時間、森を歩き回って木の実や動物などを探すだけで、食べていくことができた。
一方で農耕民は、1日の大半、農作業をしなくては生活できないようになってしまった。
食生活も、穀物ばかりをたくさん食べる農耕民より、さまざまな食材をちょっとずつ食べる狩猟採集民のほうが、栄養のバランスもとれていて健康的だった。
農耕を始めたことで、人間の労働時間は増え、健康状態は悪くなってしまったのだ。
他にも、農耕を始めたことで、疫病や飢饉、戦争、暴動などが起こりやすくなったと言われている。
そうはいっても、我々が狩猟採集生活に戻ることは、もはや不可能なのだけれど。
「意志の弱さ」は関係ない
こうした本を読むと、「自分が不健康な生活を送ってしまうのは、自分の意志が弱いせいじゃない」「人体がそうなっているから、しかたないのだ」と思うことができて、少し気分がラクになる。
もちろん、それがわかっても腰痛が治ったり、体重が減ったりするわけではないので、健康的な生活を送ったほうがいいことには変わりはない。
しかし、なぜ自分が不健康な生活に流されてしまうのかを知っておけば、必要以上に「自分は意志が弱くてダメな人間だ」などとは思わずに済む。
人体の仕組みを知ることで、自分を必要以上に責めすぎないようにしよう。
1978年生まれ。大阪府出身。
現在、東京都内に在住。京都大学総合人間学部を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにツイッターとプログラミングに出合った衝撃で会社を辞めて上京。以来、毎日ふらふらと暮らしている。シェアハウス「ギークハウス」発起人。
著書に『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社)のほか、『しないことリスト』『知の整理術』(だいわ文庫)、『夜のこと』(扶桑社)などがある。