米国で先週成立したインフラ投資法は、2020年に支配的勢力となった進歩的経済学者の一派の敗北を意味した。これら現代貨幣理論(MMT)の支持者にとって、民主・共和両党が5500億ドルの新規支出全額についてそれに見合う歳入で相殺(「payfors」として知られる措置)すべきだと主張したことは、貨幣は政府の手段にすぎないという考え方に反する。これはレトリック上の一時的な敗北にすぎない。現実には、MMTの考え方はいつの間にか政府や中央銀行、さらにはウォール街にまで浸透している。いずれにせよインフラ投資法の事実上の財源は負債だということも現実である。MMT支持派は、貨幣に関する誤った考えだとしてpayforsを嫌う。貨幣は政府支出によってのみ存在し、MMTの下では、政府は事業に必要なだけ貨幣を発行すべきということになる。今のように需給が引き締まった経済では、MMT派は、新規支出を相殺したいと考える可能性がある。だが、他の分野の支出削減や増税はインフレを避けるためのものであり、財政を均衡させることが目的ではない。
現代貨幣理論、今そこにある現実
MMTの重要な要素は金融エスタブリッシュメントに受け入れられているが、市場はまだ織り込んでいない
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