政治学の巨匠たちが語る
政治家の「真の資質」

 政治を動かすうえで政治家がどう動いていけばよいかについて、ヴェーバーはこう語る。

「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、硬い板に力をこめてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である」(『職業としての政治』)

 ニクソンは自我意識と大義の重要性を語る。

「指導者として大成する人は、強い意志を持ち、他者の意志を動かす術を知っている。強い意志の力、強い自我意識なくしては、人は偉大な指導者になることはできない。最近はなるべく自我を隠し、自我意識などないようなふりをし、ひたすらに低姿勢をとるのが流行のようになっているが、私は自己中心的でない大指導者など見たことがない。指導者にふさわしく自分を鞭打って働くためには、それだけわが大義を信じていなければならない」(『指導者とは』)

 そして挫けず、あきらめない。

「自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が―――自分の立場からみて――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への『天職』を持つ」(『職業としての政治』)

 自分の大義を信じ、強い意志を持ち、決して挫けず、じわっじわっと穴をくりぬいていく人間。それは神が社会に与えたギフテッドとも言うべき存在である。見栄えと口先に頼るデマゴーグを排し、真のギフテッドを発見し支援することこそ、政治に直接関わらない我々が行うべき最も重要な政治活動なのだ。日本の政治家がダメなのではなく、ダメな人でも簡単に当選を重ねてしまうシステムの改善にこそ、思いをいたすべきなのかもしれない。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)