日本株と対照的に
米国の株価は最高値を更新

 しかし現在、自動車に大きく依存した経済運営は難しくなり始めている。特に、EVシフトは決定的だ。

 11月から国内の自動車の生産台数は回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。世界的な脱炭素を背景に、欧州などでは内燃機関を搭載した自動車の販売が禁止される予定だ。それはわが国自動車産業の競争力をそぐ恐れが高い。わが国経済への逆風が強まる一方、自動車に代わる経済成長のけん引役は見当たらず、日本経済全体で成長期待が低下している。

 日本株と対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、先端分野を中心に企業の成長期待が高い。米国ではGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性向上を支えた。脱炭素の加速などを背景に、テスラの成長期待は非常に強い。

 それを追いかけるようにして、ゼネラルモーターズとフォードは韓国企業と合弁を組んでバッテリー生産を強化し、EV生産を増やそうとしている。自己変革を進めて新陳代謝を高める米国企業に比べ、バブル崩壊後、在来分野での雇用維持を重視したわが国の経済運営のツケは深刻だ。

 わが国の自動車メーカーが需要を獲得してきたアジア新興国も、競争環境が急速に変化している。まず、中国では不動産市況の悪化などを背景に景気減速が鮮明だ。消費者は先行きの不安心理を強め、自動車の購入を手控え始めた。

 さらに、わが国自動車メーカーの牙城といわれていた東南アジア地域では、インドネシアやタイ政府がEVや車載バッテリー生産のための「直接投資」を韓国や中国、ドイツ企業などに求めている。

 このように世界経済全体で見るとEVシフトによる自動車の電動化が鮮明だ。南米やアフリカなどでEVが普及するかは見通しづらいが、現時点でEVシフトは加速している。それに対して、本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った。自動車依存の日本経済の先行き懸念は高まっている。