さらにトランプ氏は2021年1月6日に行われた連邦議会の上下両院合同本会議で、次期大統領を公式に認定することになっていたペンス副大統領(当時)に対し、激戦州の選挙結果を認めず、各州に差し戻して票の再集計をさせることでバイデン氏勝利の認定を阻止するように再三圧力をかけていた。

 その2日前、トランプ氏は公の場で、「ペンス副大統領はうまくやってくれるだろう。あれは偉大な男だ。もしやってくれなければ好意を持てなくなるだろうが…」と言い、1月6日の朝にはペンス氏に直接電話して、「正しいことをすれば、我々が勝利するだろう」と念を押したそうだ。

 しかし、ペンス氏はその指示に背き、両院合同本会議で上院議長としてバイデン氏の勝利を公式に認定した。ペンス氏は土壇場で踏みとどまり、米国の民主主義と憲法を守ったわけだが、その結果、トランプ支持者の怒りに火をつけることになり、その日の午後に起きた連邦議会議事堂の襲撃事件で命を狙われることになった。

 本稿では前回の大統領選後に起きたトランプ氏による「クーデター計画」の全貌を明らかにし、2024年にそれが再現される可能性はあるのか、その場合、それを防ぐ手だてはあるのかについて考える。

暴徒に狙われたペンス氏の
身を案じないトランプ氏

「選挙は盗まれた!」「大規模な不正があった」というトランプ氏の根拠のない主張(大うそ)を信じて連邦議事堂に乱入した暴徒たちは警察官に侮蔑的な言葉を浴びせながら、建物内に侵入していった。

 暴徒たちは「アメリカがやって来たぞ」「いずれ正義は下される」「裏切り者のペンスを絞首刑にしろ」などと口々に叫び、トランプ氏の政敵のペロシ下院議長(民主党)やペンス氏の執務室へと向かった。