みずほ 退場宣告#7Photo:Anadolu Agency/gettyimages

システム障害を多発させたみずほフィナンシャルグループに、企業の“みずほ離れ”の足音が近付いている。だが、辞任を決めた坂井辰史社長は、大企業営業部隊を再構築させるため、伝統の「ナンバー部」解体という置き土産を残していた。特集『みずほ 退場宣告』(全8回)の#7では、みずほが今年着手した大企業営業の改革の内幕に迫る。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

システム障害で「みずほ離れ」の危機
再生の狼煙に?坂井社長の置き土産とは

「大企業がみずほから離れる動きが、表立っているわけではない。ただ、取引銀行を調整する企業が、これから現れてもおかしくはない」。ある大手銀行幹部は、そんな不吉な予言を口にする。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)が招いた度重なるシステム障害は、著しい顧客不信を招いた。個人顧客は2月、ATM(現金自動預払機)に吸い込まれた通帳やキャッシュカードを取り出せず、どうしたらいいか分からないまま、待ちぼうけを食らった。法人顧客に対しては、期の変わり目である9月末という大事なタイミングで、外国為替取引に遅れが生じるという致命的なミスを引き起こした。

 一連の障害を受け、金融界からは、金融システムの信用を損ねたことへの怒りが漏れ伝わってくる。それだけではない。産業界からは、首脳陣の総退陣に追い込まれたみずほが、人事を含めいつ混乱から立ち直るのかを不安視する声が挙がっているのだ。

 ただでさえ、「銀行が企業に提供できる付加価値は下がっている」(メガバンク中堅幹部)ところとあり、“みずほ離れ”の懸念は深刻だ。銀行が持つ間接金融の機能が重宝されていた時代も今は昔。今の日本企業は、激化するグローバル競争や来たる脱炭素社会に対応するため、事業の抜本改革を迫られている。そんな企業が欲しているのは、もはや運転資金の融資といった“単なる金貸し”ではない。M&A(企業・事業の合併・買収)仲介や、直接金融を含めた資金調達支援などの、より高度な金融サポートだ。

 顧客不信と構造問題――。そんな二重の苦難に直面するみずほだが、実はシステム障害の裏側で大企業営業の大改造を行っている。それこそが、11月26日に引責辞任を発表した坂井辰史FG社長が残した“置き土産”だ。

 企業のみずほ離れを阻止できるかどうかは、この大改造の成否に懸かっているといっても過言ではない。次ページでは、大改造の内容と、そこに降りかかる大きな課題を追う。