DXに向けた4つのキーワード

谷本:最後に、日本もしくは企業としてDXを進めていくために必要なキーワードをお伺いします。

村上「インクルージョン」です。従来はモノリシックにスピード感を持って進んできた日本企業が、ダイバーシティを実現したあとにインクルージョンできるかどうか。それが、DXを進めていくうえでの鍵になるのではないかと思います。

加治:私は「越境し接続する」です。安宅さんがおっしゃったように、粉々にして再度作り直すというイメージでもあります。具体的には、海外の売り上げを積極的に伸ばしていくこと。日立もそのような考えを持っています。人口減少がわかりきっている日本国内だけを見ていては、GDP的な成長は実現できません。特に、安全保障上で要となるアジアへ越境して接続していく。粉々にしたあとは、それを国内だけでなく海外まで広げていくことが重要だと考えています。海外の売り上げをどう伸ばすか、そして、人口が増えている地域の成長をどう日本に取り込んでいくのかを考えていくべきではないでしょうか。

石倉:これは私自身のことであり、個人に向けたキーワードなのですが、「新しいことを毎日試す。やめることは何か?を決める」です。もし、今日が昨日と同じで明日が今日と同じだったら、これほどつまらない人生はありません。毎日新しいことを試してほしい。それを簡単に実現できるのが、デジタルという手段です。そして、新しいことを始めるときは、同時にやめることも考えなければなりません。一度始めたらずっと続けるのではなく、新しいこととやめることの組み合わせを考えたらいいと思います。

 そのためには、常に外の世界に触れることが大事です。つい、自分の知っている世界しかないのだと思い込んでしまいますが、そんなことはないんです。あなたが知らない世界はとても広く、多くの可能性があり、さまざまなことが起こっています。それを自分の目で見て、自分の手で試してください。

安宅「新しい酒は新しい袋に」、これに尽きると思います。大企業というのは、300年続くうなぎ屋のようなものなんです。そこに何を入れても、その店の味になる。それでは作るべき未来が作れません。大企業の余力をもって新しい袋を次々に用意し、粉々にしたものをその袋に入れていってDXを進めていく。それが未来につながると思っています。粉々にしても残るものが、これからの未来に残すべき本物のDNAなんです。古い習慣は一度捨てなければなりません。ぜひ、これまでと違う未来を作りましょう。

谷本:DXを自分ごと化し、一人ひとりがDXの時代の中で生き抜く。これがDXを推進する大きな一歩につながるのではないかと思います。パネリストの皆さん、ありがとうございました!

すべてを「粉々」にする覚悟はあるか?DXで国と企業が身につけるべき考え方とは